YOSHIのブログ

現在デュエルエクスマキナプレイ中。RPG/TCG系のブログ更新予定

カード考察-アスガルド

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随時更新中〔最終更新日2017/8/13〕

大型拡張「メシーカ」参入にあたり現環境に沿ったリストへ順次再構築。

以下に考察した多くは前環境のもののため留意する必要がある。

 

全56種(内0種改修済み)

 

 

〈メニュー〉

 

 

〈基本的な考え方〉

現カードプールと環境に鑑み、自身の理解を目的とし、カードを考察する。

・全てのカードが基本的に使える認識を前提に一枚ずつしっかり使い込み、丁寧に考察して行きたい。(未使用の心象エアプ評価はしない)

・この考察の着地点は、効率化ではなく多様性の模索であり、各カード不利な点やダメな点がある場合は明確化しつつも、できる限りこんな有効手段がある、という前向きで有益なものとしたい。

・環境は取り上げるが、このマナ帯は鉄板のこいつが居るから入れるが枠ない、という解釈は避けたい。

 

 

〈定義〉

本文に記載する言葉について、勝手な解釈をここに定義する。

・ゲームの時間軸
立ち上がり:1-3ターン目
序盤:1-10ターン目
中盤:10-20ターン目
終盤:20-25ターン目
最終:25ターン目以降
・ユニットサイズ
小型:1-3マナ
中型:4-5マナ
大型:6マナ以上
・評価記号
◎:非常に有効である
◯:有効である
▲:多くの場合で有効となりにくい

 

 

〈フォーマット〉

◼︎今環境へのコメント
◼︎活躍する時間帯(◎・◯・▲)
立:序:中:終:最終:
◼︎親和性のある型とカード
◼︎基本考察

 

 

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ユニットカード

小型(1-3マナ)

ドワーフの氷屋

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「氷河メーカー」。「氷河」により恩恵を受ける《狼戦士 ウルフヘジン》、《ドワーフの戦士》等「氷河乗り」を複数盛り込む場合使用される。

1マナユニットであるため立ち上がり局面から展開でき、壁となるため他の「氷河メーカー」と比較して相手にテンポを譲ることなくスムーズに後のゲームメイクへ繋げられる。

対戦相手の立場で考えた場合、「氷河」は特にサイズの大きいユニットを展開される事が分かりきっているため、「レーン概念」によって氷屋を倒すことを敢えて避けるのがプレイングテクニックとなっている。そのため自身が使用する際は同レーンに無視できないサイズのユニットを展開して相手に対向ユニットを出させる事が重要。

氷屋自身は展開した時点で仕事を終えて後のウルフヘジンらに引継ぐという観点から、先行1マナで氷屋を握っていても敢えて展開せず、相手がユニットを展開した同レーンに召喚することも必要と考える。

 

ノースの略奪者

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1マナユニットのため立ち上がりから展開でき、事故防止の安定したゲームメイクに寄与する。

相手に対向ユニットを展開された場合は本人のATK1により、ほとんどの場合で相殺を取れない。

希少な「バイキング種族」。

 

療法手 シギュン

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耐久性があり、スタッツは本人のスキルとマッチしている。

G・トールのトークンや一度に多数起動するユニット、小型多載のバフタイプデッキ等と親和性が高いが普通に運用してもかなりのライフを得られる。

特に対ルクソールにおいて相対的に〈冥獣 アメミット〉や〈ファラオマスクの呪い〉の脅威を緩和させた功績は大きい。

 

ドワーフの鍛冶屋

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現状ユニットのスタッツは全カード投資マナに沿ってほぼ近似値で極端にATKないしHPの尖ったものは少ないため、+1/1の効果は見た目より遥かに大きい。

1-3ターン目の立ち上がり局面においては恩恵を受けた前列ユニットが多くのケースで本来相殺となるカードを有利交換し、好循環を作り出すことができる。

《大地蛇 ヨルムンガンド》や《熊戦士 ベルセルク》など展開直後のATK1がネックとなるユニットにバフをかけてあげるとそのカードの強みだけを残せる。

本人に殺傷力はなく、HPも微力で各種AoEに巻き込まれたり、対向に縦展開されると割合簡単に突破される、盤面が更地では無意味になる等、弱みがあるものの投資コストともたらす恩恵に鑑みれば有用面の方が大きい。

ゲームメイクにおいて他ユニットの前列展開を意識的に強いられることが行動を制限するが、それも最大恩恵を前提とした《ダインスレイフの波動》ほど縛りが強いものではないため、さほど気にするレベルではなく収まっている。

 

スヴェアの交易商

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ヒールがトリガーとなってシナジーを生む《大蛸 クラーケン》や盤面に残り続けることでサイズが膨らむ《熊戦士 ベルセルク》等と相性が良い。

珍しい能力を持ったアスガルドの色濃いカード。本人は殴れないため、必然的に同レーンで突破されやすい。

対コントロールルクソールでは完全に腐る。

 

海氷巨人 フリームスルス

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「氷河メーカー」。単騎で複数の「氷河」を生成する力を有するのは当カードのみ。

本人が〝生き残りながら〟〝盤面ユニットをヒールする〟という条件は見て受ける印象よりハードルがかなり高く、適切なマナ帯域にウルフヘジンら「氷河乗り」へ盤面を引継ぐにはG・フレイヤのGPでマナ拘束されることを甘受するか《スヴェアの交易商》を利用し、デッキパワーを落とす等の制限が付いて回る。

《砂塵神 メジェド》のように即効且つ確実性のあるカードが「氷河」には必要だったのだが、安定した「氷河」形成には現状ドローできなかった場合や即除去された場合のフォローとして、他の「氷河メーカー」を複数盛り込む必要があり、必然的にデッキパワーが落ちることが「氷河」主体デッキ最大の枷となっている。

 

ドワーフの少年

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対戦相手によって評価が大きく変動するカード。同勢力の2マナユニットの中で一番攻撃性に優れる。

対コントロールルクソールにおいては、G・イシスのGPも「成長」によって打ち消されるため一定の評価ができる。

対オリンポスにおいては、初動のATK1が大きく後手を踏む形になり、《ケンタウロスの軽装騎兵》等「速攻持ち」で不利トレードをされることが多く、後になってゲームを振り返るとその一打でゲームが決まってた、という局面が多くあり、かなり心許ない。

その他勢力との戦いにおいては、割合しっかり自分のターンまで生存し安定した2/2から始められるため最低限投資コスト相応の働きをする。

 

バイキングの見習い

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トロールの凍戦士

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大地蛇 ヨルムンガンド

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投資コストに対してスキル・スタッツ両面で優れる。

ネックとなる点は初動時に自分のターンまでしっかり生存させATK2を取得しないと攻撃して来たユニットを多くの場合で倒せず自分だけリタイアしてしまうため、相手勢力の警戒すべきムーブや盤面の状況を見て展開すること。

4ターン目以降は対向にATK4を超えるユニットが出始めるため、初動の遅い「成長」の性質上活躍の幅はどうしても限定されてくる。真価を発揮するには適切な3マナ帯域から展開するのが望ましく、それにはある程度デッキリソースを1-2マナ帯に割く必要がある。

 

守護の戦乙女 ヘルヴォル

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スタッツが水準を満たした上で、「氷河」シナジーによる非常に強力なスキルを持つ。

本来リタイアするはずのユニットが継続して盤面に居残ることは相手には割く必要のなかった追加リソースを割かせることに紐付くため、全体HP1上げるという効果はとてつもなく強力。

持つスキルの強力無比さとバランスを取るように、前提条件とスキル発動タイミングの縛りが非常に強い。「氷河」生成するというのはその分相対的にデッキパワーないし、バトル中テンポ面での拘束を受けることとイコールになるし、展開から相手のリターンで生存しなければスキル恩恵を受けられない。

安定した盤面形成と当カードが有効となる運用に開発のリソースを割くだけの潜在パワーは大いに秘めている。

 

狼戦士 ウルフヘジン

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「氷河乗り」。素出しで高スペックな上に「氷河」へ乗ると一回りサイズが上がる。

3/2/3というスタッツそのものが優秀。環境のAoEや各種ダメージスペルはダメージ:2が多く、また1-3マナ帯のユニットの多くはATK2であることから、それらのカード1枚でウルフヘジンを処理することはできず、多くの場合で複数交換やG・ハデスのマナ拘束をさせることに貢献する。

 

霊鹿 エイクスュルニル

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小型のバフスキル持ちユニット。

本人のスタッツは水準だが盤面に及ぼす効果込みで考えると3/4/3と、相当高い。

前提条件に左右ユニットを展開する必要があるため、最大の恩恵を受けるべく通常だと5ターン目以降の展開が多い。そのため当カードは3マナ帯で使用するカードではなく、3ターン目以降に使用する質の高いバッファーといった認識になる。

上方修正を受けた左右のユニットが相手の計算を狂わせるのに有効で、現状ユニットのスタッツは全カード投資マナに沿ってほぼ近似値で極端にATKないしHPの尖ったものは少ないため、+1/1の効果は見た目より遥かに大きい。+1/1の修正が届かなかった相手のHP1を削り切り、またギリギリこちらのHP1を残し生き残る状況を作る。

 

デーンの狩人

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「氷河乗り」。素出しで水準を満たした上で「氷河」へ乗ると一回りサイズが上がる。

前段の《狼戦士 ウルフヘジン》でHP2と3に大変大きな壁があることは説明の通りで、「氷河」へ乗れない場合はほとんどの場合で相殺となるため、護衛が付いている意味は無いに等しい。

 

ドワーフの炊事番

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3/2/3の高スタッツに即時2ライフ回復付き。

《聖鳥 シームルグ》の上位互換。特に対アグロとのダメージレースでアスガルドがテンポを握ることは相対的に難しいのが現状であり、失われたテンポをライフ回復手段で追随することができる。

前段の《狼戦士 ウルフヘジン》で3/2/3スタッツの有用度は説明の通り、多くの場合で複数交換やG・ハデスのマナ拘束をさせることに貢献する。

 

兵長 レイフ

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フレイヤの戦猪

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中型(4-5マナ)

激情の戦乙女 カーラ

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伝書鴉 フギン

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ドロー加速の希少ユニット。スタッツはスキルが潜在的パワーを秘めるためATK1と抑えられている。

一般にTCGにおけるドロー加速は選択肢の幅を広げ、事故を防止し、特定キーカードを引く助力になる等でAoE同様強いアクションとされるが、このゲームにはデッキ切れによるファティーグダメージがあるため、ドロー加速は死を早める行為という一面を持つ。

イズモに《怪異 コダマ》という同じくドロー加速のカードが存在するが、主に回復を用いたコントロールアスガルドではゲーム展開が遅いため、イズモの軽コスト連打とは性質が根本で異なり、現状追加ドローをすることの大きなアドバンテージは生まないと考えている。

 

ノースの竜船

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サーチスキルを持った希少なユニット。

現状サーチできるバイキングは《1/1/1ノースの略奪者》、《2/0/2スヴェアの交易商》、《3/2/3ウルフヘジン》の3種となり、サーチというよりデッキ圧縮の観点になる。

圧縮行為の良し悪しはあるがこのカードを揃えたら勝ち確定、というようなコンボも現状見つかっておらずファティーグを早めてまで圧縮する意味は無い。

スタッツもサーチカードという拡張性を見越しての少し抑えられた性能になっているため、現状では有効となる運用が難しい。今後のカードプール拡張に期待。

 

傭兵 ハスカール

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バランスの良い護衛付きユニット。特にアグロ系に対して高いパフォーマンスを発揮する。

対アグロにおいて、このマナ帯域でATK2且つ、HP3以上の護衛付きというスペックが環境に適している。比較対象に展開直後の《大地蛇 ヨルムンガンド》、素出し(氷河なし)の《デーンの狩人》を出すと、コストも違いそれぞれの強みがあるものの、ヨルムンガンドはATK1によって相手ユニットを倒せないし、狩人はHP2によって相手と相殺になる。

特別な条件もなく展開から即時、盤面が更地であっても多くの場合でレーンを無視した複数交換、またはマナ拘束を可能とさせるのがこのカードの強みで、安定性がある。

対オリンポスにおいては、《ケラウノスの制裁》が飛ぶまで時間がまだ残される点も好評価。

 

熊戦士 ベルセルク

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体力特化の中型ユニットで、戦闘を交わすことで攻撃性を上げる。

4マナ/HP5は破格で、同マナ帯に1枚のカードで当カードを盤面からリタイアさせるのは非常に限定的と言える。

ネックとなる展開直後のATK1は一度戦闘(または酸溜まり)し、減ったHPをヒールとユニット同時展開の《トロールの運搬人》や《豊穣神 フレイヤ》で回復してあげるとテンポを相手へ譲らずに本人の良さだけを残してあげることができる。

 

ドワーフの戦士

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「氷河乗り」。素出しで高スペックな上に「氷河」へ乗ると一回りサイズが上がる。

〝適切なマナ帯までに盤面の優位性を譲ることなく地形生成する〟という前提条件は難度が高いが、《彷徨えるゴーレム》に同コスト帯で対抗できるのは大変限定的で、且つ打ち勝てるのはこのカードのみ。

前段の《ウルフヘジン》で記載したHP2と3の大きな違いと同様に、HP4と5の間にも《セクメトの殺戮》に巻き込まれないという大変大きな壁がある。

 

トロールの運搬人

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ユニットとヒールの同時展開を可能とさせるユニット。

平時、バトル中においてG・フレイヤのヒール量が2点確定ならこのユニットに使用するけど1だと意味がなくて使用できないケースは多々ある。そのギャンブル性を解消し、同時に本来ヒールによるマナ拘束を受けてテンポ面で後退する場面をユニット同時展開の性能でしっかり抑える。

同列に全快したユニットが存在しても傷付いたユニットをちゃんとヒールする。

ヒールをトリガーとしたスキルを持つ《大蛸 クラーケン》等のユニットが真価を発揮するにはスキル発動しなければならず、それには〝本人が生き長らえつつ〟、〝ヒールのリソースを割く〟この二つの条件をプレイヤーへ求め続けるため、G・フレイヤのGPでヒールすれば良いという話より実際は複雑で、マナ拘束を受けてテンポを譲ればそのユニットは死にやすくなるし、スキルが発動出来なければ意味がない。そのため、現在ユニット+ヒール同時展開の当カードが受け持つ役割とその有効性は、大きいと考える。

 

ヘルの衛兵

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百戦神 テュール

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◯ナーフ後現行テュール

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▲旧テュール

投資コストに対しスタッツ、スキル両面で優れる中型ユニット。

意図すればターン制と召喚酔いの縛りを無視して一方的に相手のユニットを除去+ユニット展開+バフという滅茶苦茶なことを一枚でやっている。

このマナ帯域はゲームの明暗を分かつ重要な局面であり、突っ込んで言えば〝相手のさっきのターンはなしにして、こっち中型ユニットにおまけでバフ付けちゃうね〟、こんなことをやっているので、相手はプランが崩れない訳がない。

相手のダメージAoEに巻き込まれた際、並列ユニットがHP0になっても、バフを受けた場合そのユニットは生存する。

このカードの登場によって陽の目を見るカードは多く、特に大型ユニットを多数盛込み連打するコントロールデッキの確立に貢献。

 

混沌神 ロキ

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自軍の盤面全体へHPをATKへ転化させるというトリッキーなスキルを持つ中型ユニット。

対向へユニット展開された場合、サイズの大小を問わず相手ユニットのHPを超えたATKの余剰分は意味を成さないため、現状寿命を縮めてまだ上げたATKが有効となり、継続して盤面へ影響を及ぼすような運用法は見つかっていない。

効果は問答無用にHP0にし、リタイアさせる。

《守護の戦乙女 ヘルヴォル》との同時起動がロキの癖を取り払い、恩恵のみ残してくれるが、地形生成とサーチのない状況下でキーカード2枚のピック、それを超えた先にもたらす影響と考えた時に、どうしても環境が当カードを許してくれるのは難しいと感じる。

 

狩猟神 スカジ

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ユニット生成のスキルを持った中型ユニット。

スタッツはユニット生成を前提としたように投資コストに対して抑えられている。

《魔蝸牛 デーモンスネイル》が生成した毒沼に浸けるコンボで、一回り小さい擬似的サナム状況を作り出せる。

ルクソールにおいては《セクメトの殺戮》然り、《レシェフの疫病》でも雪狼もろとも簡単に溶けてしまう。

 

勝利の戦乙女 ブリュンヒルデ

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ヒールをトリガーにしたスキルを持つ中型ユニット。

バトルの時間軸において、このマナ帯域は互いに盤面の取り合いが激しくなる局面で、盤面にユニットを残したまま且つスキルを発動させるための追加リソースを割くのは難しい。

ヒールとユニット展開を同時にやってのける《トロールの運搬人》、《豊穣神 フレイヤ》と親和性が高い。

 

大型(6-10マナ)

豊穣神 フレイヤ

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投資コストに対してやや重い。前段の《トロールの運搬人》同様、確定ヒールが割と良い働きをする。

現状複数のユニットが同時に負傷したまま生存しているシーンは極めて限定的であるため、ほとんどの場合で本人の最大効果は発揮されない。強いて挙げればアスガルドAoEによる負傷。環境の主となるスペルやレジェンドユニットのAoEのほとんどはダメージではなく、HPの値そのものをマイナスするため負傷扱いとならない。

オールヒール+ユニットの同時展開はコンセプト自体極めて有用で、今後のカードプール拡張次第で大化けする可能性を十分に秘める。

 

大蛸 クラーケン

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このマナ帯域でこのユニットを単騎突破できるのは限定的で盤面に残したまま、《魔狼 フェンリル》を展開すると盤面を非常に厚く固めることができる。

G・フレイヤのGPでシナジーは完結できるため、《サテュロスの短弓兵》のように、テーマデッキを組む必要がなく独立して挿入できるのは強み。(特定キーカードを主体としたデッキに対して話を少し膨らませると、サテュロスの短弓兵については、1枚で多重起動する《コリントスの軍犬訓練士》や《カドモスの竜牙》などを搭載するが1枚の性能は脆弱で必然的にデッキパワーが落ち、デッキの中核となる短弓兵を引けない場合勝ち筋が立たない。その場合安定した勝ちを望めないため個人の評価は高くない。)

 

霧巨人 ヨトゥン

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「氷河乗り」。素出しで高スペックな上に「氷河」へ乗ると一回りサイズが上がる。

癖のないシンプルなパワーカードで、HP6を等価交換するカードは現状極めて限定的であり、登用すると確実にデッキパワーを上げられる。烈火の群狼追加により対アグロ戦の安定さが抜群に向上したため、露出がかなり増えた。

 

雷電神 トール

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投資コストに対してスタッツ、スキル両面に優れる大型ユニット。

HP6を等価交換するカードは現状極めて限定的であり、相手は対向に雑魚を置いてお茶濁しすることもできず、盤面に残した分スキルでダメージを重ねるため展開して失敗する局面が少ない。

カードプールがまだ少ないため、確定除去を使用させれば他のユニットが生存しやすくなるし、現状ほぼ入れ得と言えるほどパワーを持っいると考える。

 

氷地神 ヨルズ

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闘首領 エイリーク

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魔狼 フェンリル

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本人の能力が稀有で、また優れているため、《大蛸 クラーケン》や《海氷巨人 フリームスルス》等シナジーの起点となることができ、今後も一線級で活躍が見込まれると予想する。投資コストに対しスタッツはやや細めだが超ヒールのお陰であまり気にならない。ターンエンド時に本人があらかじめ全快であれば回復のフローはカットされクラーケンらの誘発スキルも発動しない点は留意する。

 

暁光神 ヘイムダル

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本人が持つスキルは大変有用。投資コストに対してスタッツが細く、HP4が心許ない。

スキル発動が被ダメージ時の為、展開したターンに即時発動する《ミョルニルの掲揚》のような奇襲性やインパクトが無いのは辛いが、現状1ターンに3以上のATKを上げられる超希少性の高いカードであるため、開発が進み回復とダメージを繰り返し大打撃を叩き出す運用ができるかもしれない夢のあるカード。

 

焔巨人 スルト

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戦略神 オーディン

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一枚で盤面全てにユニット展開させる大型ユニット。

相手にAoE等の有効手段がない場合は盤面を圧倒するエンドカード

逆に相手が返しの手を用意していた場合はいきなりピンチを招きかねない大味な部分を持っているためそこをケアできれば非常に有効。

特に新カード追加からミラーマッチが激増しているため、露出が増えると考える。積むならAoEを意識して2枚積みが好ましい。

 

スペルカード

軽コスト(1-3マナ)

グレイプニルの束縛

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ダメージはおまけで縦列の足止めに価値を見出せるかどうか。

個人が重要と考える基本的な考え方の1つに、固定された枚数の有限資産(デッキ)を使用する際、(特殊なコンボやシナジーを除いて)1枚カードを使用すれば、相手のカードと最低1:1の等価交換しなければアドバンテージを譲る、という考え方がある。

その考え方に沿えば等価交換は限定的で望み薄、単純なアド損ということになるため、冒頭に書いた通り、『氷漬け』という時間の遅行に価値はあるか。

このゲームに於いては『レーン』という概念があることから、別レーン同士で互いに対局し相手の顔を殴り合うアグロオリンポスのようなスタイルにはマッチするかも知れないが、現環境のアスガルドに速効性が優れているとは言えず、局所的なケースを除いて当カードに有効な活用手段が見出せない。

 

フレイの恵み

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条件がキツイ分、投資コストに対して能力が破格なものの、前段の《豊穣神 フレイヤ》で記載した通り、現状盤面に出た複数のユニットが一度に負傷しているシーンというのは超限定的であるため、G・フレイヤのGPで十分と考える。

 

ロキの悪戯

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1-2マナ帯の立ち上がり局面に於いて、対アグロではユニット展開できないことが大きなディスアドバンテージとなる。一度失った盤面の優位性とライフ差は取り返しづらく、また、その後も安定して複数の「氷河」を展開できなければ、「氷河」が作成されたレーンは無視されてしまい、初動のダメージレースで負けているため相手が展開したレーンに防御ユニットを展開せざるを得なく、対応が後手に回ってしまう。

 

エイルの癒し

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G・フレイヤがGPにより投資コスト6-10消費して得られるライフをコスト2で即時、手軽に取得できる。取得量は見た目より遥かに高いため、延命は間違いなくできるが、どこまで行ってもライフであり、盤面に影響を及ぼさないため、重要な局面である程ドローして引いた時の絶望感。一定ライフを捧げる形で盤面に影響を及ぼすイズモ《小狐丸の反撃》のようなカードがあれば陽の目を見るかもしれない。今後のカードプール拡張に期待。

 

ヨトゥンの降雹

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エインヘリヤルの召致

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バルドルの閃光

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TCGに於いて、盤面をリセットするカードはどのタイトルでも総じて強い。この投資コストでAoE2は破格の性能であり、全カードを通しても代表格のスペル。対オリンポスの低耐久性ユニットと複数交換したり、こちらの盤面の攻撃を通したいユニットがHP3以上ある場合に打ち、対向ユニットを処理して直接プレイヤーを叩くことも出来る。それらがたったの3コストで使用できるのは破格以外の言葉がない。

 

スカジの氷矢

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アスガルドAoEスペルに優れている一方で、個に対するダメージスペルがない。局所的に後数点足りないケアや、同マナ帯で優先的に処理したい《サテュロスの短弓兵》や《占師 陰陽博士》などの除去に役立つ。除去しきれずとも、氷漬けにより時間を稼ぐことは有用。

 

ダインスレイフの波動

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当カードが盤面へもたらす効果は最大3/3/3となり、最大効果を引き出した場合は投資コストに対し非常に質の高い恩恵を受けることができる。

当然ながらユニットが前列に存在しない場合発動できないため、ゲームメイクの前列運用を強いられる点が行動を制限する。

前列を咎めるカードは現在数種、特にトリニティ《火竜 ウェルシュドラゴン》の打点はユニットを殲滅する火力があり、登用率も高いため警戒が必要。

盤面へ与える影響に《霊鹿 エイクスュルニル》と非常に近いものがあるがエイクはユニットであり、列指定がない点で扱い易い。

 

バイキングの氷風呂

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中コスト(4-5マナ)

ブリシンガメンの慈愛

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前段の《豊穣神 フレイヤ》で説明した通り、オールヒールが有効となるシーンが現環境では極めて少ない。

平時ユニットは元々のHPがそこまで高く設定されていないため、短命に終わる。今の環境では、G・フレイヤのGPで十分と考える。

 

ヘルの招来

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癖があるものの、このコストで確定除去は破格の性能。癖の作用を前向きに捉えるならば、相手に一枚ドローを強要し、デッキ切れを早めるという考え方もできる。ハンド差の1枚ロスをどう解釈するかによって評価は大きく変わる。軽コストなため残りマナで複数カード使用出来る点においても個人としては有用と考える。

 

フレイヤの促成

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4/2/2、重い。このマナ帯域は盤面を牽制し合う局面のため、ユニット展開できないのが辛い。護衛持ちとの親和性は高い。フリーになったユニットをパンプアップさせてトドメに使えるシーンがある。

 

ギャランホルンの轟き

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当カードが使用可能となるマナ帯域は対向に無視できないサイズのユニットが出てくるような局面であり、コストが重すぎて打ったらその後追加アクションを起こすマナが残らないのは致命的に辛い。

勝手な尺度で換算するとハンドからこのカードを1枚切り、この投資コストに対して2ドローが最低ラインとすると、このマナ帯域に相手のリターンを経た上で自分の盤面に2体のユニット。ドローしてターンエンドできる程余裕のある状況じゃない。

テンポを譲らず適切に打てるシーンは超限定的で、互いの戦力をほぼ7〜8割方出しハンドが双方枯渇しているような状況に、(先にデッキ枯渇するリスクを負いながら)駄目押しで有効。それ以外の状況では8割方ハンドに腐る。 

 

重コスト(6-10マナ)

グングニルの穿通

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AoEを序盤〜中盤のマナ帯域で打てるのはルクソールに準じて、他勢力に勝る明確なアスガルドの利点であり、《バルドルの閃光》と比較した時にややコストパフォーマンスで見劣りするものの、このカードにしかない良さがある。盤面上氷漬けとなったユニットはリターンに殴ってこれないため、次ターンでレーン上取りこぼしたユニットケアに充てることや、安全に《ミョルニルの掲揚》や《水晶術師 ジアー》など重めのカードを展開する等、時間稼ぎがちょっとした隙間を埋め、態勢を立て直すことに役立つ。

 

ミョルニルの掲揚

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盤面が更地では使いようが無いが、シーソーゲームを一気に勝ちへ導き、やや劣勢程度であればそれを跳ね返すパワーを持っている。《外科医 ベルザリオ》や《水晶術師 ジアー》が相手に展開されてやりにくいのと同じ観点から、奇襲性が高く相手の計算を大きく狂わせるパワーカード。最大8/12/12のバンプアップは驚異の一言。小型をジアーで強化するタイプのデッキと特に相性が良い。 アスガルドアイデンティティを感じるカード。

 

オーディンの軍略

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盤面展開のスタッツが計9/9/9なためデッキパワーが上がる。『レーン』という概念の下、《離魂術師 サナム》や《ピクシーの王女 ターニア》同様、一度に複数レーンを展開し押し付けることは対応が取りづらい。

HP3なのでほとんどのAoEを耐えるが、このマナ帯域は《ホムンクルスのサルファー》、《火竜 ウェルシュドラゴン》が控えている時間軸であり、展開されると一網打尽でピンチに落ちるリスクをはらんでいる。

コストが重く同ターンに複数カード展開するマナが残らないため、縦列に対応できないことは辛い点。

個人の考えとしては、8マナ以降のカードは即時、直接的に相手のライフ削りへ寄与したり、または相手の盤面を除去する、展開から自ターン内で結果の出るカードでないとどこか大味で、リターンのしっぺ返しを想像してしまい扱うのが怖い。

 

 

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〈用語集〉

・tier1(ティア):現環境の中で最適化されたトップレベルのデッキ。人口が一番多いと解釈しても問題ない。ミッドレンジオリンポス、コントロールルクソールが挙がる。評価の際、環境面で考慮。

AoE:(Area of Effect)全体攻撃
・GP:ガーディアンパワー
・スタッツ:ステータス
・スペック:総合的な能力

・バニラ:特殊な能力がないユニット
・ハンド:手札
・メタ:特定のデッキ(またはカード)に対する対抗策及びそれを実行すること
・ファティーグダメージ:デッキが0になった時にドローすると発動するダメージ

メシーカ環境、アスガルドのすゝめ

メシーカが参入してからおよそ一月が経過した。

今環境におけるアスガルドの立ち位置と自分なりの理解を一度この場で整理したい。

以下の文章はいずれも個人の見解であり、誘導性をはらむ内容も多くあるため、情報の取り扱いについては留意していただきたい。

この投稿がアスガルドを使う方たちに少しでも助力となる事を願う。

 

 

〈メニュー〉

 

 

全体的な所感〜冬の時代到来〜

今環境はアスガルドにとって苦難を強いられる状況になっている。敢えてここは希望を残し曖昧な表現をするのではなく、“厳しい”という個人の見解をしっかりと提示しておきたい。

理由は明確である。アスガルドの強みを叩きつける環境では無いからだ。

アスガルドの強みとは何か。代表的な特徴の1つに“耐久性”が挙げられる。前環境のアスガルドはガーディアンをライフ回復しながら中盤までシーソーゲームをしかけつつ、終盤にかけて高耐久のファッティを繰り出すことによって盤面を固めることを得意とした。

では何故その強みを誇示出来なくなったのか。それはルクソール復権に起因するところが大きい。

テュールのナーフやまともなカードが今回追加されなかったことは相対的弱体化に繋がっていることは言うまでも無い自明の事実である。

だがそこに輪をかけて今回ルクソールの序盤超強化が施され、ルクソールの露出が急激に増えた。今のルクソールは極端な話ベリザリオを積んでおけばなんとかなった初期とはワケが違う。

個人が提示する見解は詰まる所、『対面意識にアグロとコントロール、その2つを見なければならなくなった』ということだ。

 

 

 

勢力の状況

ここで一旦アスガルド以外の勢力所見を「戦略」にフォーカスして簡単に列記したい。

オリンポス

オリンポスは全スキルを通して見ても頭一つ抜き出ている「速攻」を引っさげて今まで通り戦えば全勢力に対して一定以上の戦果が上げられる。そのスタイルがコントロールに対し滅法強いのは自明で、勢力が持つ強みを押し付けることがそのまま勝ちへと繋がるのだから、シンプルだろう。

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イズモ

イズモは若干傾向が異なるが属性としてはオリンポスと似たスタイルにカテゴライズして差支えない。

特徴の1つ、「バウンス」は優秀な小型軍と相まって嵌るとどうしようもない理不尽を相手に叩きつけることができる。

序〜中盤に速さでオリンポスと力負けしないイズモはメシーカカード最強のケツァルコアトルをスマートに使いこなす恩恵を得た。地形生成というとても大きな課題を克服できたのは序盤しっかり盤面を構築できる力がイズモにあるからだ。

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ルクソール

ミイラの兵長とセシャトに代表される今回の序盤超強化はコントロールしかアーキタイプの生き残れなかったその傾向すらも大きく変え、アグロやミッドレンジのアーキタイプを生み出す大変革が起きている。デッキタイプも王道の他に【壺型】、【メネス型】、【砂漠型】と実に多岐に渡り、そのどれもが強い。

今回の追加がルクソールに与えた恩恵は従来の致命的な問題であった、中・高速寄りの相手に対し序盤に取り返しの付かない致命的なダメージを抱えることを払拭している。

結果、王道コントロールは対アグロ寄りに対しいい勝負をし、対コントロールへは優位性を加速させ強みを誇示できる状況になっている。

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トリニティ

トリニティは序中盤うまく耐え忍び、後半にかけて盤面を取り返して行くコントロール型を得意な傾向とする勢力なため、抱える問題は現在のアスガルドと同じことが起きていると考える。勢力の持つ強みと個性は誇示できず、対面意識にアグロとコントロール、そのどちらも見なければ行けない状況だ。

 トリニティの持つ特徴の1つに「ランプ」があるが、ルクソールの増えた今の状態は有効となるランプの活用術がかなりあやしい状況下で蛇足となる場面が度々あり、ランプ抜きも1つの選択になっている。

同系の似たような境遇に立たされるアスガルドは回復と耐久性に優れるため対アグロに対し一定以上の強さがあるが、既存プールの持ち得るランプや鉄壁の個性が何に対して一定以上強いのか、申し訳ないが私には分からない。これはトリニティを愛する方への暴言ではなく、バランスを作っている開発側へ強い疑問の投げかけである。

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対面意識とその解決の模索

勢力の戦略について触れたところで今回投稿する内容の本題に入る。環境を席巻するオリンポスとルクソールに対する解決だ。冒頭で述べたように私の見解は厳しいの一言。だがそこで諦めと紐付けせずアスガルドを好きな身としてどこまでも最後まで解決を模索し続けたい。

対オリンポス

基本的な戦術

対オリンポスは構築段階で持ち前の回復力を生かすことは当然ながら、バトル中《ケウラノスの制裁》はよくよく意識した方がいい。意識してどうにかなる代物でないのは確かだが、対面にアレースをはじめとした高ATKを残したまま、こいつでブロックできるだろ、と防御ユニットを展開して終えると制裁を打たれ思わぬ失点からそのまま負ける。

カードプールはメシーカによって大きな変化は起きていないため、対面では制裁を打たれた場合どうなるか、をよくよく考え立ち回ることが重要。

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構築の勧め

AoEシギュンや炊事番がとても有効なのは初期と変わらない。

1:複数交換が見込めるハスカールもいいだろう。

ここでは対アグロ寄りに対しアスガルドは一定以上の解決材料を持っているため、ルクソール意識の上でどれだけ回復や序盤の展開にリソースを割くかを検討する必要がある。

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ルクソール

基本的な戦術

現環境のルクソールは冒頭から説明している通り、序・中盤に驚異的な戦力を得た。それらによりもたらされる本当の脅威は、アメミットやファラオマスクに代表される後半の直接ダメージだ。序・中盤に失点すると後半ルクソールの時間になりそれらが展開された時、不思議なほどあっという間に負けることになる。序・中盤、その失点と引き換えに得た相手への打点はどうせアメンやマスクによって無かったことにされるのだから、最初から全力で守るべきである。

確定除去は基本的にアメミットとカオスキメラ以外に打つべきではない。アメンはサルファーでクリアしよう。これは構築でもあるが、立派な戦術の最適解だ。

そうして相手のデッキ切れまで戦うことが多い。

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構築の勧め

ガーディアンイシスの露出が多いため、初期環境同様にベリザリオは相手の計算を大きく狂わせる切札になることがある。

サルファーは中途半端にウザったいアメンを消せるため有効。

アメミットは絶対に放置できないので確定除去に幾つかはリソースを割くべき。長期戦必至な現状ではファティーグダメージを早めるヘルの招来を勧めたい。

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勢力へ有効となるカード

オリンポスとルクソールを含める全勢力へ対し有効となるカードを挙げたい。初期より露出の多い優秀カードは省略。

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《エイルの癒し》

このカードはアグロに対する解決の一枚であるが、ルクソールの得点力が増したことで採用理由がシンプルになった。個人的に二枚は邪魔になるが一枚はかなり有効となるケースが多いと考える。

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《ヨトゥンの降雹》

コアトリクエの大石像に代表される一部、放置するとゲームがそのまま決まってしまうカードへ対するメタとして、地形破壊は何かしら採用した方がいい。しかし地形破壊はその性質から腐りやすいのも事実で、このカードは比較的汎用性が高く使い勝手が良い。

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《彷徨える石像》

 このカードはアグロに対し確実に1ターン延命してくれる点と、AoEに耐性がある点で実に環境へ適応していると考える。

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《コアトリクエの大石像》

環境が煮詰まり地形破壊が当然になれば評価は変わるが、現状対策がなされない場合そのままゲームを決めるパワーを持っている。対アグロには出す暇無いだろうが、現状一枚は入れておいて損はしない 。

 

 

 

デッキ紹介

1つ自身の使用するデッキを載せておく。さらなるアスガルドの発展があれば良いな、と思う。スペルが多すぎるのが課題。もっと肉を入れたいのだが絞り切れずにいる。棟梁が若干芋くさい。シワテテオは見た目よりやる子。大石像一枚アウトは安定だと思う。さて、何を入れるか。禁忌とジアーが喧嘩する。それにつられて棟梁とリッチロも空回ることがある。棟梁はジアー、禁忌持ちハンドなら前列に。リッチロがハンドにある場合はよくよく展開先考えたほうがいい。ウルモル邪魔してリッチロ出せずに泣く場合がある。

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最後に

今期のアスガルドから見たルクソールの強大さは本当に強烈で、理不尽に感じることもある。先ずセシャト以上に《ミイラの兵長》があり得ないくらい強い。サナムの対向に置かれたら兵長とイシスGPで無力化されるとか悲しすぎる。こっちもカード一枚切ってるしね?とか言う話ではない、お前もサナムを使うだろ。

最初期からアスガルド軸でやっている私にとってイシスにはヘイトが溜まる一方である。(ルクソール好き、イシス好きの方を否定する意図はない。が、アナザーストーリー執筆中に一番苦労したのはイシス回である。脳がイシスを拒否している。)

ただ、今回のルクソール超強化を好意的に捉えている側面もある。それはオリンポスを主とした対アグロ寄りにルクソールが戦えるようになったことだ。今までが戦えなさ過ぎた。初期オリンポスにとってルクソールはほぼほぼ餌だった。限定的にオリンポスとルクソールの関係を見たら今くらいのパワーバランスが丁度いいと考える。

それでも今回、アスガルドやトリニティがそれに追随する手段をもちえなかったのは残念に思っている。アスガルドで言ったら貴重なプール追加枠がバイキングにかなり持っていかれ、そんなものは現状ウルモルと同じくらいファンデッキに寄っていて使えない。高コスト払ってバイキング1/1強化して何があるんだ、って言う。何もないよ!

当然注視していると思うが、デヴェロッパーにはメシーカの勢力固有カードがどの位の使用率なのか出来ることならユーザーへ提示が欲しい位だ。求めているのは未来的に使えるかもしれないカードじゃなくて今の環境で遊べるかどうか。死にカードが多すぎるでしょ。

 

以上。

とは言え、私はアスガルドが好きなので軸はずっとこのまま、今環境は悩みながら過ぎて行くでしょう。苦楽を共にして真の歓びがあるってね。

 

【非公式】メシーカ アナザーストーリー 第4部

これは主の頭の中の妄想を膨らませた非公式のメシーカ。アナザーストーリーであるー。

 

目次

 

16.信仰

ー。

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場所はメシーカ丘陵地帯。トール達が海岸地帯を出立し三日程経過した頃、ラファエルは単身その場所に居た。地に生い茂る草花は風の抱擁を受けて耳障りの良い呼吸をそよそよと続けている。ここは生命の活力で溢れ、太陽が向ける陽の光はとても温かい。

「ミカエル、やはりここに居ましたか。」

ラファエルが正面に見据える先、甲冑の天使は居た。彼の精神を縛る念が鎖へと具現化し、背に絡みついて純白だったその翼は漆黒へ変質している。

「断っておきますが、私は貴方がどうなろうと構いません。しかし貴方は救世主様を守る使命も全う出来ず、こうも堕落している。これでは我が領土の名折れです。その罪、しっかりと償って頂きます。」

ラファエルは派遣された断罪人が如き口調でミカエルを罵った。見詰める目は氷のように冷たく温情を欠片も感じられない。

「グギギぎっ、ラファエルッ!貴様!良くぞ我が眼前に姿を現した。我の姿が見えるか、俺、俺だ、俺を見ろッ!この気高きの翼をッ!この大地のパワーが俺をさらなる高みへと昇華させてくれたッ!もう、貴様には負けん…!」

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ミカエルは精神を大きく乱すものの、アテナとは異なり自我をほとんど残していた。無論、ハデスらがアテナと戦い得た知識をラファエルが知る由は無く、素行まで醜悪になったか、としかラファエルは思わない。

「我に挑んだ愚かさを悔いよ…!行くぞ!ラファエルゥうう!!」

怒号と共にミカエルが空高く腕を突き上げ、未知の呪文を詠唱するとラファエルの足元に地獄の門が顕現した。

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《ルシファーの冥門》

時間差のある確定除去

 

(これは…。)

地中より出でた冥土の死神がラファエルの身を掠め取ろうと大きな鎌を振り抜く。ぶぉん、という鈍い音が空間を切り裂き、その軌跡は虫の息すら残さない。

 

……、…、…。

 

死神が繰り出した一閃の先には刈り取られた歪みを残す空間。そこにラファエルの姿は無い。ミカエルは手応えを感じ、空高く咆哮する。
「うォおお…!やった…、やったぞ…!」
「何をやったんです?私はここですよ。」

間髪なく返ってきた声の先へ目を戻すと、ラファエルが不敵な笑みを浮かべ先程と同じ位置に立っている。ミカエルは思わずぎょっ、とした。自身が召喚した死神が消えている。

「貴様っ!何処へ隠れた!ええい、もう一度だ、出でよ地獄の門!奴を呑み込め!」

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《ラファエルの慈雨》

地形生成スペル。デメリット地形の上書きもできる

 

「…ッ?!」

今度は召喚された門が一瞬にして消失してしまった。ラファエルが何かをした様子は無い。その場で変わらずに立ち尽くし、笑ったままである。

「貴様…!何をした…ッ!」

ミカエルは全身で怒り、ラファエルを睨むことしか出来ない。両者の実力の差は歴然であった。

「怠惰ですね。貴方に一つ、教えを与えましょう。」

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《ベリアルの幻炎》

トリッキーな盤面依存除去スペル

 

ラファエルが呆れた様子で髪を一つ搔き上げると、その刹那ミカエルの身は炎で焼かれていた。ミカエルには何が起こったのか分からない。

「ぐ、ぐぉおお…!」

全身を覆った猛々しい炎はミカエルの情念に冷水を浴びせ、思考を停止させる隙を作り出した。

「貴方は私達の領域で、一体何を学んだのですか。貴方の正義とは。貴方の信仰とは、一体何なのですか。」

ラファエルの言葉がミカエルの心の核に入り込んでくる。

「貴方が是とした正義を、信仰を、何故信じてやれないのです。私が今やったことは貴方にだって出来て当然。未来を今に置き換える時間の操作です。私達の大いなる信仰によって獲得した力はこれ程までに偉大で、一途な信心の成せる技。それを一時の情で薄汚れた異界の力に身を堕とし、これまで積み上げた物を全て捨て。それで真の高みへ登れるとでも?恥を知れッ!」

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《聖樹の杯》

トリニティランプの顔となるスペル

 

ラファエルには信仰を捨てたミカエルが許せなかった。発せられた声は諭しの文句の裏、煮え滾る怒りであふれている。

(そうか…。俺は…。力を求めるあまり道も半ば自分の正義を捨てたのか。)

(俺はお前に勝ちたかった。ガブリエルにも。俺は誇れる自分で在りたかったんだ…。)

失いかける精神の中でミカエルは自らの心の弱さを悔いた。燃え盛る炎に身を焼かれながら自らの欲とその咎に気付いたミカエルの身が発光し、彼を縛っていた鎖と黒のオーラが宙へ霧散しはじめる。そんなミカエルの異変にラファエルは気付きながらも、呪文は解かなかった。そのまま彼方へと葬るつもりなのだ。

 

ーッエイルの癒し!

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《エイルの癒し》

高密度のライフ回復スペル

 

「ーな…ッ!」

ラファエルが咄嗟に振り返ると、そこにはトール達が居た。ミカエルを焦がした炎がフレイヤの癒しによって見る見るうちに浄化されていく。

「余計なことを…!」

ラファエルは怒りで顔を硬直させている。

「おい。お前。ふざけるなよ!!」

トールは出合頭に拳でラファエルの顔をぶち抜いた。鮮血を風が運んでいく。

「お、俺は…、助かったのか…。」

「ひぇ〜。今のはマジ危なかった、姉さん、毎度ッ!ナイスフォローっス!」

命拾いしたミカエルの様子を見てアヌビスが安堵の溜息を吐いている。そんな中トールとラファエルは睨み合い、互いに沈黙したまま対立し合う。言葉にせずとも互いの気持ちは両者に伝わり、相容れず、どうやら両者の間には決定的な溝が出来たようであった。

そうしてトール達一行は蒸発したラファエルと守護神ミカエルを回収することに成功したのだった。

 

 

 

17.本懐

ー。

一行がメシーカに上陸してから七日目の早朝。トール達は山岳地帯を飛行していた。切り立つ山々は立ち込める濃霧によって視界が奪われ、来訪者に厳しい表情を見せている。ここでは光のほとんどが遮られてジャンの透明能力が役に立たないため、一行は生身で歩を進めていた。トリニティ領の者も付かず離れずな距離を保ってトール達の後を付いてきている。

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「直に特異点到着だ。この辺りァ、視界が悪りィしワイバーンの巣がそこらじゅうにあるから慎重に進めよ。」

ケツァルコアトルが警告する。辺り一帯をグワァ、グワァ、というワイバーンの奇声が木霊してその音は止むことがない。一行は奪われた視界の中、いつ何処から飛び出してくるか分からないワイバーンの存在に、冥土の入口へ片足を突っ込んでいるような感覚に襲われた。一行は五感を高め周囲を警戒しながら少しずつ進む。

(チッ、ワイバーンの野郎、やけに殺気立ってやがる。一体何が起こってンだ。)

異様な空気の中、幾つかのワイバーンの巣を素通りした先にかの侍は居た。

スサノオ様…っ!」

ウズメが声を掛けるも反応がない。その出で立ちは全身赤いオーラで染まり、幾多の数え切れない戦を潜り抜けたであろう様子をまざまざと見せ付けるように鎧の部位はボロボロに傷付き、本人も多くの血を流し息を荒げて居た。スサノオの横にはワイバーンの骸が数体だらしなく転がっている。ケツァルコアトルはそれを見るなり事の原因を理解した。未知なる生物が突如自分たちの縄張りに現れ同胞を食い散らかしていることに、ワイバーン達は膓を煮えくり返らせているのだ。

スサノオ様!」

ウズメはスサノオの正面に回り込み、彼の目をじっと見詰めながら声をかけ直した。

「ゼェ…ゼェ、なんだ、新手か?」

「私です、ウズメです…!スサノオ様をお迎えに参りました!」

ウズメはか細くも芯の通った声で自分の存在をスサノオへ伝えるが、スサノオは錯乱状態にあるらしくウズメを認識できないでいる。

「切っても、切ってもお前らウジャウジャと湧いて来やがる。いいぜ、まとめてかかって来やがれ…!」

スサノオは取り付く島もない様子で怒気を周囲にピリピリと放り散らし、狂戦士となってウズメへ突進して来た。

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振りかざすスサノオの剣は雷のように空を断裂する。ウズメはそれを軽やかな身のこなしで辛うじて躱すが、スサノオの殺気に気圧され恐怖に足が竦んでしまう。

(こ、怖い…。)

スサノオは容赦無く二の太刀、三の太刀をウズメに向け続ける。ウズメは躱すのが精一杯で反撃に出ることが出来ない。

「ダメだ、やっぱり俺が行こう。」

二人の応酬に見兼ねたトールはウズメの下へ駆け出そうとしたが、フレイヤがそれを止めた。

「あなたが行っても何も解決しませんわ。これはイズモの、ウズメさんの戦いです。」

でもよ、とトールは言いかけたが、迷いの無いフレイヤの表情を目の当たりにして思い直し、戦いの機微を見守ることを選んだ。

(きっと、私がスサノオ様にできることは何ひとつ無い。それでも…逃げない!)

ウズメは幾許か逡巡するも、自身に退路など端からないと理解していた。あとは自らを奮い立たせる“助けたい”という想いの丈をぶつけるのみ。‪

スサノオ様。今のウズメの全力、受け止めてください。参ります!」

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ウズメは覚悟を決め、前に出た。スサノオがウズメの意気に呼応し深く太刀を踏み込んでは、ウズメがその攻撃をひらりと躱し、或いは受け流して二つ三つとスサノオへ傷を付けていく。その華麗な身捌きは蝶が舞うように優美でどこか儚く、命のやり取りが行われていることを忘れさせる程に洗練されている。

「やるじゃねえか。でも太刀が浅ぇんだよ!」

スサノオの怒りは最高潮に達し、ウズメを圧倒した。繰り出す剣圧は逃げるウズメの身体を搦め捕り、重篤な傷を負わせる。

「きゃあ…っ。」

トールがもう我慢ならない、と思うより先に身体が動き出そうとしたその刹那、二つの影がスサノオを強襲する。

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ーグワァッ、グワァッ!

ワイバーンであった。その二つの個体は通常のワイバーンの体躯をゆうに超えていた。変異種である。

「マズい、あいつァワイバーンの王族だ!」

咄嗟にケツァルコアトルがそう叫ぶ。羽ばたきが起こす風圧は嵐のように抗い難く、その眼光は自らの縄張りを荒らす土着者に対して強烈な敵意を剥き出している。

二匹のワイバーンスサノオ目掛け一斉に炎を噴き出した。スサノオの足元に伏せるウズメは深い傷で逃げる事が出来ない。

「ウズメーッ!」

トールの咆哮が木霊する。スサノオは押し寄せる焔に刮目した。刹那、業火が二人を包んだ。

 

ードォーン!

 

「そ、そんな…ウズメさん…。」

アヌビスはそれ以上言葉を継げないでいる。絶体絶命とその場にいる誰しもが思った。黒煙が次第に晴れていく。視界が晴れた先には、炎から全身でウズメを守るスサノオが居た。

(俺は何の為に戦ってるんだ。)

(何の為に力を求める。もっと強え奴と戦って、倒して、倒して、修羅の先に何があるってんだ。)

炎に包まれる刹那スサノオは逡巡し、落とした視線の先にはウズメが居た。

(ウズ…メ?)

(そうか…俺は…。こいつらを守るために強くなる、って。そう、決めたんじゃねえかよお!)

スサノオは窮地を前にして、自身が力を求め続ける中で見失った武士の本懐を取り戻したのだ。

「わりぃ、俺のせいで沢山傷つけちまった。すぐ片付けっから、ちっと待ってな。」

ウズメは辛うじて保った意識の中、いつもの凛とした表情のスサノオを見て安堵し、涙を流しながら首を縦に振った。スサノオはそんなウズメを優しくギュッと抱きしめると、ワイバーン二匹を正面から見据えた。

刀を両手で中段に構える。そこからワイバーン二匹が骸となるまで三秒とかからなかった。スサノオは二十メートルはあったであろう対象との距離を一の踏み込みでゼロにし、神速で刀を振り抜くとスサノオの背はワイバーンの鮮血で赤く染まっていた。肉塊が地に落ちぼたぼたと音を立てている。

「すまねえ、迷惑をかけたみてえだ。ムシが良くて悪りぃがウズメのこと、介抱してくれると助かる。」

スサノオはトール達に詫び、助けを乞うた。

「承知しました。一先ずこの場を離れましょう。」

フレイヤが周囲に充ち満ちる殺気を警戒して言った。そうしてウズメはスサノオを助けることに成功したのであった。

 

 

 

18.思慕

ー。

一行がメシーカの地に降り立ち九日目の昼。トール達は砂漠地帯を飛行していた。この辺りは陽が差す内は万物が灼熱の熱線に照らされ、また夜になると極寒へと表情を変える命を有する者にとって過酷な環境になっている。生命の活動は酷く制限され、トール達にとっても長居は出来ないと思わせる世界であった。

ジャンが暑さに弱ったため、一行は彼方まで延々と続く同じ景色を生身で進んでいく。

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「みんなヘバッてますねえ〜。おいらにとっちゃこれがホームだから、なんとも思わねぇや。」

一人アヌビスだけが普段と変わらぬ様子で、周囲を茶化している。彼なりに皆を元気付けようとしているのかは分からないが、フレイヤから見てアヌビスは普段より口数が多く、また意味のない言葉ばかり発しているように受け取れた。

「イシスも普段スカしてる癖して迷惑かけますよ、ホントにも〜。」

「…直に特異点だぜ。イヌっころ、気ィ引き締めな。」

ケツァルコアトルが弛緩したアヌビスの様子を気にかけるように声を掛けた。

ほどなくして一行は特異点に到着した。しかしイシスの姿は見当たらず、確認のため全員で地上に降りる。すると突然地中より、ずぼっ、ずぼっ、と手が現れ一行を取り囲んだ。

「これは…ミイラか!」

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《ミイラの兵長

メシーカ環境のキーユニット

 

ミイラは乾燥した人体の骸に悪霊が取付き、たとえ手足が捥げようとも魂魄を引き離さない限り活動を辞めず無限に対象を襲うモンスターの一種である。一行が降り立った先を無数のミイラが包囲し、迫ってくる。ミイラは動きこそ緩慢であるが一度掴まれたら二体、三体と後続が対象を掴んで生気を吸い取り、蝕んで行く。重度の傷から回復して日の浅いウズメやミカエルにとっては数が数だけに十分脅威となり得た。一同に緊張が走る。

 

ーピューゥ…ッ。

 

突然、音として微かに認識できるその合図で、ミイラ達の動きが止んだ。それはアヌビスの力によるものだった。号令を受けたミイラ達はこぞって地中へと還って行く。その統一された指揮は実に鮮やかであった。

「ふぅん。やるじゃない。折角楽をしようと罠を張ったのに無駄になっちゃった。アンタだったのね…アヌビス。」

イシスは初めからその場に居た様子で、砂の背景の中からじんわりと具現化し、姿を現した。イシスも例に漏れず黒の瘴気を身に纏い、死者の魂魄が彼女の周囲を彷徨っている。

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「ミイラはみんなおいらの仲間っスからね。それよりイシス、おいらが判るのかい?」

ミカエル戦を目の当たりにしていないアヌビスにとってはハデスから得た“自我を失った守護者”という前知識があったため、自分を認識できるイシスに安堵した。

「分かるわよぉ、あんた、アタシを嵌めたアメンのイヌのアヌビスでしょ。」

「分かってるなら話が早くていいや。イシス、救世主は何処に行った?とっとと戻ってお前の仕事をしてくれよ。」

アヌビスは手放しでイシスの下へ駆け寄ると、イシスが放つ不穏な雰囲気に気付き、ゾッとする。

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《アペプの詛呪》

新環境でアグロタイプに採用される直接ダメージスペル

 

「ぐっ…。」

アヌビスはイシスの唱えた面妖な呪文によって毒されてしまう。

「あは…あははっ、あははははッ!バカね、アヌビス。戻るわけ無いじゃない。面倒くさい。“アイツ”が何考えてるのか知らないけど興味も無い。アタシはここで適当に一人の時間を満喫するわ。」

イシスの狂気が顔を出した。イシスはやっとつかみ取った暇に羽根を伸ばすような口振りでケラケラと笑いアヌビスを馬鹿にしている。

(だからこいつと戦るのは嫌だったんだ…ヤリづれぇったらありゃしねえ…くそっ。)

「ふぅ、アンタたちを追い返せば、アタシはずっとこのまま。アンタに興味なんてないけど、邪魔をするなら消えてもらうわよ!」

そこからイシスはアヌビスに向け幾多の呪文を浴びせはじめる。疫病、呪い、枯渇、あらゆる攻撃がアヌビスの体力を奪って行く。

「おい、ビスケ、なんで反撃しねぇんだ!やられちまうぞ!」

トールが我慢できず声を張る。

 「…へ、へへっ。」

アヌビスは笑ったままイシスの攻撃を受け続ける。

「あら、それで本気?」

「続けて行くわよ!」

「ふふっ、ごめんねぇ〜。」

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《ファラオマスクの呪い》

盤面無視の直接ダメージでルクソールを代表するスペル

 

「ぐぁあああー…ッ!」

アヌビスは窮境にいよいよ膝を付いた。

「もう、何なのよ、アンタ!」

イシスはアヌビスの戦意無くただ自分の攻撃をサンドバッグのように受け続ける様子に苛々していた。かといってアヌビスに降伏する気配はない。

「お…おいらは、オンナにゃ手を出さねえのさ…。」

アヌビスはボロボロになった身体で不敵に笑い、そう言った。

「あら!そう!じゃあ、とっとと消えなさい!」

イシスはムッとして渾身の一撃を放とうと詠唱を始める中、アヌビスは決死の覚悟で懸命に言葉を繋ぐ。

「イシス、お前は無関心なんかじゃねぇ…!傷付くのが怖くて、無関心を装ってるだけだ…。」

「何を言ってるの?意味がわからないわ!ムカつく!」

イシスは思わず詠唱を止め反駁を差す。その様子はイシスの心が透けて見える程、顔を赤らめ明らかに戸惑っていた。

「だってそうだろ…。ルクソールでおいらはお前をずっと見てきたんだ。旅の仲間、お前にも居たろ。素直になりやがれ…!」

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イシスはアヌビスの言葉に感化され、過去の思い出に思考を巡らせる。だがそれを途中で辞めると、鬼の形相でアヌビスを睨みながらイシスの手中で魔法陣が完成した。

(へへっ、もう、どうとでもなれや…。)

アヌビスは死を覚悟した。イシスの唱えた呪文は大きく発光し、アヌビスとイシス自身を包んで行く。

「ここは…あの世かな?」

アヌビスが恐る恐る眼を開く。傷ついたはずの身体は痛みが消えてむしろ何処か心地良い。

 「バカね、死んでるワケないでしょ。」

イシスは聖母のような眼差しでアヌビスを見下ろしている。イシスが最後に唱えた呪文は癒しのものであった。

イシスはこれまでに数多くの計略や政治に翻弄されてきた。裏切り、嫉妬、猜疑。そんな負の感情に触れる中で繊細な彼女はいつの日か心に蓋をする。心が決して傷付かないように。それが彼女から無関心を生み出した。ずっと孤独に一人、誰にも理解されることもなく拒絶を選択してきたイシスにとって、アヌビスの言葉は何処か優しく、温かみがあり心の琴線に触れた。

オシリスのヤツ、お前のこと心配してるぜ。あの人、妹のお前が大好きだからさ。」

アヌビスはへへっ、と笑ってそう言うと、バカね、と言ったイシスの頰には一つの雫が伝っていた。イシスはとっくに自分の弱さに気付いていたのかも分からない。他者を信用せず、傷付くことを怖れ、自分では無い他の誰かが手を差し伸べてくれることを待ち続けていたのだ。いつの間にかイシスを取り巻く負のオーラは綺麗に消失していた。

そうしてアヌビスはイシスの心を取り戻すことに成功したのであった。

 

 

 

19.決起

ー。

地脈から溢れ出す大地のパワー。その熱気は照りつける日射し。または噴き上げる突風。トール達は第五の特異点近くに居た。一行がメシーカに上陸してから十四日目のことである。

やっぱりここだったか、ケツァルコアトルは頭を掻きながらうんざりした様子で開口一番そう切り出した。

「この地はメシーカの中でも屈指のいわく付き名所で、あの世とこの世を繋ぐ黄泉への入口になってるって言われてんだ。土地守りの俺たちでも滅多なことが無けりャァ、近づかねェ。トール、お前の友達は一体どんな奴なんだ。」

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一行は遥か彼方、地の底を確認するように見下ろす。この脇から勢い良く落ちる滝の底に侵入口はあると言う。自然が作り出した巨大な穴の底からは神のみが分かる微かな線で死者の呼び声がおぞましく聴こえてくる。

「ただの捻くれた野郎さ。」

トールはロキの放つ禍々しい気を確かに感じながら短くそう答えた。

メシーカを巡り、一行に分かったことがひとつある。操られた守護者たちは皆、自身に所縁のある、その者が一番パワーを引き出せる場所に縛られていると言うことだ。操者の意図は相変わらず見えないが、この因果が重大なことであることは明らかであった。

着陸すべくジャンがゆっくりと高度を下げる中、フレイヤは束の間の回想を巡らせる。それは縛られた守護者の浄化についてだった。

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フレイヤは冷静にこれまで救った守護者のことを振り返った。整理するとハデスが言った通り、守護者の全員が漏れなく心に闇を抱え、その原因や解決の手段はバラバラであった。

海洋に居たアテナは、仲間を護りたいという一途な想いの裏で他者から認めてもらうことを強く望み、その心の孤独がアテナの身を闇へ落としたがハデスの理解を得ることで心を取り戻した。

草原に居たミカエルは、力を求める余り自らの正義を捨て闇に身を染めたが、ラファエルの圧倒的な信仰の強さを前に自らの過ちを認識する事で心を取り戻した。

山岳に居たスサノオは、自らの大切な者を護り抜く為に力を求めてきたが、修羅の世界に身を置き続けることでいつしか戦いの動機を失ってしまう。それが彼の身に闇を落としたが、決死の覚悟で身を挺したウズメによって思い出し、正気を得ることができた。

砂漠に居たイシスは、塞ぎ込んだ繊細な心を無関心という仮面で偽りつつも、言い知れない孤独と虚無。愛を心の内で渇望しそれが彼女を闇に引きずり込んだが、アヌビスの掛け値無い捨て身の行動によって自らが作り上げた孤独が幻想であったことに気付き、闇を払った。

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その救出の全てがどれも奇跡と呼べる賜物だった。ただ倒せば良いという訳では無い、と言ったハデスの言葉が今なら理解できる。ミカエルのケースのように、単純に力を誇示することが結果的に正解だったということはあるだろうが、アテナのケースではミカエルと同じアプローチを取っても決して彼女を救うことは出来なかったであろう。また、操られた守護者の精神状態も様々だった。スサノオのように有無を言わさず襲ってくるような錯乱状態もあれば、イシスのように自らの咎まですら、自覚しているような冷静を保つケースもある。果たしてロキがどんな闇に身を堕とし、どんな精神状態であるのか。叡智に長けるフレイヤを以ってしても、推し量ることは出来ない。

 

ーああ、ご苦労だった。脱出手段は用意できたぞ。ゲートは依然あのまま、今のところ変わった様子はない。次はロキだな。

 

アヌビスがハデスと念話で突入前の連絡を取っている。

「そうっス、ええ、ええ。じゃあ、入口着いたんで、また。」

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一行は洞窟の入口に到着した。トールには不思議と、これが最後の戦いになる予感があった。無論、神たちが救世主と呼ぶマキナや、イアソン団の依然足跡は掴めていないのだが。そしてその勘は程なくして現実のものとなる。

トールは侵入前に後ろを振り返る。そこには最初フレイヤ、ウズメ、アヌビス、ハデスに自分を加えた五名で始めた旅が、ケツァルコアトルとジャンの協力を得て仲間のほとんどを回収し、いつの間にか大パーティとなっている。各々その場にいる理由は違えど、元にいた世界へ帰る目的は一致している。

よし、とひとつトールは気合を入れた。全員で帰る。目的は変わっていない。必ず、果たす。トール達は決意を胸に、地獄の入口へ入って行った。

 

 

 

20.決戦

ー。

一行が洞窟へ侵入してから数刻。トール達は戦いの渦中に居た。骸が異形な怪物へ姿を変え、襲いかかってくる。闇から出でるその骸は倒しても、また別の魂が輪廻して復活を遂げ、延々と攻撃してくる。その数は暗闇で正確に判断できないものの、百をゆうに超えていると思われた。

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ーカカカカカ。ニク、ニクダ。ヨコセ、ニク!

 

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「キリがねぇ!兄貴、先へ行ってくれ!俺たちがこいつを引き付ける!」

アヌビスが救出した守護者達と共に骸を煽動し、トール達を送り出す。この骸を繰り出す元凶がロキであると睨むトールは、すまねえ、と言い残し先へ進んだ。

 

「またかよ!」

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ーグルォオオゥアア!

 

アヌビス達と別れてから入り組んだ迷路を数百メートル進み、細く崩れかけた天然の橋を通って少し広まった空間に出ると、今度は異形の獣がトール達を取り囲んだ。

 

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「ここは私たちが引き受けましょう。勘違いしないで欲しいのですが、これもデュナミスへと無事に帰るため。貴方は貴方にしかできないことを行なってください。」

今度はラファエルがウズメと共に残ると言い、トール達を送り出した。ウズメが敵を引きつけ、その隙にラファエルが目にも留まらぬ速さで数多の呪文を詠唱し、獣達を片っ端から殲滅して行く。トールは後ろ髪が引かれる想いを抱きながらも、折角の意気を無駄にしない、と思い直しロキの元へと急いだ。

トールの下には、フレイヤケツァルコアトルが残った。青白く光った松明が入口を飾る空間へ足を踏み入れると、そこにロキは居た。

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「遅かったなぁ、トールよ。待ちわびたぞ。」

ロキはやはり冷静で自我を保っていた。ロキの瞳は妖しく光り、生前の原形が分からない無数の魂魄がロキを守るように漂っている。その背後ではトール達が知り得ない未知の魔法陣がいくつも設置されている。どうやら無限に現れる骸や異形の怪物はこの魔法陣によって生成されているらしい。そのからくりは見て取れる様子から、生者の命を魂魄へと転換させ、その魂魄を怪物たちへ入れることによってその活動を延々と循環させるというものであった。正真正銘、悪魔の装置である。

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「ロキ、てめぇ、許さねぇぞ!」

トールは起きているおおよその事態を把握し、ロキを睨みつけた。

「はて。何に怒っているのか分からぬぞ、トールよ。俺は俺の楽しいと思うことをやっているだけだ。俺の中の関心事が救世主からこの大地を滅ぼすことに変わっただけさ。」

ロキはさも当たり前のように毅然と自分の考えを言った。

「お前みたいに頭のいい奴は何考えてるか分からねえし、分かりたくもねえ。色んな奴ら待たせてんだ。時間がねえ。行くぜ、ロキ!」

トールは鎚ミョルニルを強く握りしめ、臨戦態勢を取った。そこに突如、怪しい影がひとつ浮かび上がる。

「テスカ!!」

ケツァルコアトルが咄嗟に叫んだ。テスカトリポカだった。

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「…。“神柱”を壊していたのはお前たちであったか。ロキよ、そのままの姿ではやや戦況が苦しかろう。お前に力を与えるぞ。」

テスカトリポカが杖を振り、ロキへ光をかざすと、ロキが苦しみ出し、姿を異形へと変身させた。

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ーグォァアアアアーッッ!

 

「な、何ッ!」

その異形の怪物はトール達の背丈を遥かに超え、猛々しく咆哮する。

「テスカ…お前…、なんで…ッ!!」

一連の黒幕がテスカトリポカによるものだったとケツァルコアトルはそこで初めて理解させられた。今まで疑念を抱きつつも心の何処かで友と呼べる、また家族とも思えるテスカトリポカを信じたその想いを木っ端微塵に打ち砕かれる。

「コアトルよ、お前は分かっていないのだ。この先迎える暗黒の未来も、またその結末も。俺はこの大地を守る神、テスカトリポカだ。何に代えてもこの地の未来は、俺が守る!俺は他に用があるのでな。さらばだ。」

テスカトリポカはそう言うと、暗い影を滲ませ立ち消えてしまった。

 

ーグォァアアアアーッッ!

その巨人はトール達に考える隙すら与えず、力一杯その巨大な腕を振り回す。

「ぐぉおおお…!!」

トールは両腕で防御するも、叩きつけられた絶大な力はトールのそれをゆうに凌駕し、トールの身体は吹き飛ばされ壁に叩きつけられてしまう。トールを呑み込んだその腕はそのまま勢いを止めることなくケツァルコアトルフレイヤを同様に呑み込み、吹き飛ばす。

「ぐは…っ。」

たった一振りの拳で三人は致命的なダメージを負ってしまった。視界が霞む。

 

ーっブリシンガメンの慈愛…!

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フレイヤは渾身の力で癒しの波動を周囲へ放った。トール達の痺れていた手足の感覚が次第に戻って行く。

息を荒げながらすまねェ、とケツァルコアトルが詫びた。

「どうやらお前たちの仲間を巻き込んじまったのは、俺の友だったみてェだ。本当にすまねェ。俺も全力でこいつを止めるぜ…!」

三人に戦意が漲った。見詰める先に君臨する敵は遥か巨大で、その身を賭しても刺し違えることすら叶わないかも分からない。それでも、引かない。人にはその人生の選択において、負けると分かっていながらも引いてはいけない場面が必ずあり、その選択を誤って逃げ出せば、時に命以上に大切な“何か”を失ってしまうことがある。それは人も神も同じである。引いた先に何が待っていると言うのか。うまく逃げ延びたとして、もたらされるものは逃げたという紛れも無い事実と決して晴れることのない後悔だけなのだ。

「行くぜッ!鏡泉!!」

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「ダインスレイフの波動!!」

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ケツァルコアトルがトールとの戦いで見せたメシーカ大陸特有の分身呪文を三人にかけ、フレイヤアスガルド領域に伝わる筋力増強呪文で援護する。

「ロキ。俺はお前の心の闇なんか、分からねえ。俺がお前にしてやれることはただ一つ。全力でお前をぶちのめすことだけだ!」

トールは咆哮した。赤毛を逆立て、赤い目を真紅に染める。トールが拳に力を入れて英気を蓄えると、辺りに地鳴りが轟き、洞窟の天井からパラパラと土が落ちてくる。

ミョルニルよッ!力を解き放て!行くぞッ!うぉぉおおお!!」

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トールがそう咆哮すると、ミョルニルが強烈に発光し、内から出た閃光の雷がトールの全身を覆った。それは鋼鉄よりも分厚く鋭利で、対峙する者へ絶望と浄化を与える神の怒り。ケツァルコアトルはトールの様子を見ながら、あの時俺にぶつけようとしたものはこれか、と思った。

三人は一斉に巨人へ立ち向かった。トールが最前線で自分の身の丈を何倍にも大きくした鎚ミョルニルを力一杯かなぐり回し、巨人の骨を粉砕すると、ケツァルコアトルが追い討ちに弱ったその腕や脚を鋭利な一閃でもぎ取って行く。巨人が怒り狂い、無差別に暴れ回ればフレイヤが決死の回復で前線二人を維持させる。

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そうして一進一退の攻防を幾度となく繰り返した末、闘いは終わりを迎えた。

「トールよ…。お前の…勝ちだ。俺を斬れ。」

崩れた肉塊の中から顔を覗かせたロキが息も絶え絶えに、トールへそう告げた。トールは肩で精一杯息をしながらロキを見下ろす。

「…ロキ。お前のやったことは、許せねえ。だがなー」

トールはロキの体を持ち、力一杯引きずり上げ、巨人の身体からロキを引き離した。

「償い、っつうもんは生きてするもんだ。死んだらできねえだろ。ほら、帰るぞ。」

たった今まで命のやり取りをしたロキへトールはそう言って笑って見せた。この男、なんと懐が深いことか。

「ふ…ふはは。後悔するぞ、トールよ。」

ロキはトールへ込み上げる殺意を覚えた。この男を自分の手で殺してやりたい、ロキは心の底から湧き出る感情の一杯で、そう思った。興の対象が変わったロキから黒のオーラが浄化されて行く。

そうしてトール達は、ロキの心を取り戻したのであった。

 

 

 

ex.帰還

ー。

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ー大変だ、ゲートの様子が急におかしくなりだした。今にも門が閉じそうだぞ!

 

時はメシーカ上陸から二十日目の朝。ロキ戦によって仲間の多くが傷付き、これ以上の捜索は危険と判断したフレイヤの進言によって、一行は一度ハデスらと合流しようと来た道を引き返していた。そんな折、ハデスから突然の悪い報せである。

ロキの救出から五日ほど道を戻ったが、ここから寄り道せず最短を取っても、如何に神速を超えるジャンの脚を以ってしても三日はかかる道のりだった。一同に帰れなくなる、という頭の片隅に追いやって居た恐怖が現実のものとなって今更込み上げて来た。

「…船乗のみんなを巻き込むわけには行かねぇから、これ以上は無理だ、って判断したら、旦那たちだけで帰ってくれ。」

アヌビスは気丈に振る舞いながら落胆を声色に出さないよう、努めて明るくハデスにそう告げた。

 

ーしかし…っ。……ギリギリまで待つ。また連絡する。

 

ハデスもそれ以上返す言葉が見つからない。他の守護者を救出するという大義を成したトール達にどうにかしろとも言えず、船乗達の前で必ず待つとも、言えなかったのだ。

現実は無情。空間転移の能力を持たないトール達に為す術は無いものと思われた。そんな中、ラファエルが平然とした様子で切り出した。

「このまま最短の道を進んでください。」

一行にラファエルが意図することなど知る由は無く、アヌビスが疑問をぶつける。

「ラファエルさん、今の話聞いてなかったのかい。俺たちはもう、帰れないんだぜ。」

ラファエルはそんなアヌビスの言葉を歯牙にも掛けず話を続けた。

「種明かしをするつもりは毛頭ありませんが、どうして私が一人、この大陸の奥地へ貴方がたよりも先に着けたと思います。大丈夫です、三日で着けるなら、間に合います。」

ラファエルの一切迷いがないその様子に一同は困惑するが、洞窟内で一度助けられたトールはラファエルを信じようと言った。

「どんなからくり使うのかは分からねえけど、他に策があるわけでもない。ラファエルの言う通りにしてみよう。」

「トール、貴方との決着は、いずれ。」

ラファエルはすました顔でそう言った。

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フレイヤがジャンに合図を送ると、ジャンは全速力で空を駆けていく。

 

ー。

(くっ、ゲートが持ちそうにない。最早ここまでか…!)

アヌビスとの念話を終えて数刻した頃、ハデスはゲートを見据えながら覚悟を決めた。

「全員、船に乗れ!出発するぞ!」

(すまぬ、みんな。必ず、必ずやまた、迎えに来るぞ…!)

船乗達が大急ぎで出発の支度をすると、船はゲート目掛け海にその身を投げた。

「待ってくれ!」

大陸へ背を向けたハデスの後方から声がする。まさかな、と思い振り向くと、そこにはトール達が居た。

「俺たちも乗る!乗せてくれ。」

急いでトール達は船に乗ると、ケツァルコアトルは海上に独り佇み、トール達を見詰めていた。

「ウィンド!!」

トールがケツァルコアトルに向かって叫ぶ。

「トール!お前たちとの旅、楽しかったぜ!あばよ!!」

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トールはケツァルコアトルの心意気に胸を打たれた。今生の別れになるであろうことを二人は心のどこかで分かっていたが、しみったれた別れの挨拶など二人には似合わない。

「いつかまた会おう!ウィンド、元気でな!」

 

次第にケツァルコアトルの姿が小さくなる。

船は全速力で駆け込むようにゲートへぶつかった。一行は無事、デュナミスへと続く道に間に合った。

 

そこから先、どうやって各々が自分たちの領域へ帰ったのかは省くことにしよう。

そうしてトールの“気ままな散歩”は幕を閉じることとなる。

 

トール達の背後には雄大な大地が広がっている。

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その地の名は、メシーカ。幽玄なる魔力と生命の鼓動に溢れた、あらゆる自然と文化を内包する魅惑の土地であるー。

 

 

End

 

 

 

あとがき

改めまして、YOSHIと申します。

この度はメシーカ アナザーストーリーを読んでいただき、ありがとうございました。先ずは心より御礼申し上げます。

このストーリーはデュエルエクスマキナ(DXM)を題材に、私の膨らませた妄想を思いのままキャラや世界観へ反映させ、描きました。

まだ私が幼い頃、HOBBY JAPANより刊行された「デュエリスト ジャパン」にマジックザギャザリング(MtG)のバックストーリーを読み物にした定期コラムがあり、私は毎月それを読むのが楽しみでした。マジックの世界は幾つもの世界が隣接し、主人公はその多元宇宙と呼ばれるあらゆる世界を旅して回るのです。今回は幼い頃にそのコラムやマジックのカード中にあるフレーバーテキストを読んでワクワクした気持ちを思い出しながら書きました。

無い頭をひねり、オフ時間の大半を注ぎ込んで約1ヶ月の工程で作った今作は、ひとつの話が大体1500文字、読む時間にして大体3分程度で読めることを意識しています。(最終的には全21話、約36000文字、1時間半ほどの読み物となっています。)原稿用紙にすると90枚、ろくにゲームもせず書いていたので我ながら熱量を持って取り組んだと思います。

このストーリーを生み出すきっかけはすごくシンプルで、アスガルドのトールがゲーム中に攻撃を受けると喋る「タダではやられんぞ!」、それを物語の中で文章に起こしたい!その一心からです。実際には1部で私個人のカタルシス()は得られたのですが、あまりにストーリーが中途半端なため、これは最後まで書くしか無いか…、と謎の使命感を持って書き上げています。

やってみて思ったのは、真っ先に、大変なことが多かったです。(笑)どこまでできたか分かりませんが、世界観を読者に共有してほしいために背景を掘り下げることや、会話と情景の繋ぎ部分がスムーズに行かないことなど、うまく行かなかったことは沢山ありました。書くことを仕事にしている人には頭が下がる想いです。(極め付けはジャンというオリジナルキャラを苦し紛れに創作してしまい、申し訳ありませんでした…!)

それでも、やって良かったと思っています。好きなこと、やりたいことを、余計な先入観や苦手意識は置いておいて、とりあえずやってみる。それを実践しああ、自由だな。としみじみ思いました。

ちなみに物語を書く時はいつもその場面場面に合った音楽を裏で流しながら書きました。

【20.決戦】はこれで最後!と思いつつFF6の「決戦」を聴きながら。(FF6のBGMは神)

【FF6】24. The Decisive Battle - 決戦 High Quality Soundtrack 高音質 作業用BGM サントラ - YouTube

【ex.帰還】は別れの哀愁を漂わせるべく、Alicia Keysの「If I Ain’t Got You」を聴きながら。

Alicia Keys - If I Ain't Got You - YouTube

 

少し話は逸れますが、カードゲームはそのジャンル性から、特に論理的思考や計算が聞き手に説得性を持って受け取られるものだし、発信する側も正しいことを発言することに捉われがちです(少なくとも私はそういう部分があります)。でもこれを書いてる最中に思いました。もっと、自由でいいんだな、って。万人が正しいと思えることを当たり前のように発信するのではなく、自分はこう思ってるんだけどみんなはどう?という自分の中にある曖昧な概念や疑問を発信してこそ、自由と発展があるのだと思います。

最後になりましたが、私が生んだこの作品に読者の方が少しでも面白みを感じていただいたり、前向きな気持ちになれるようなきっかけとなれれば、この上なく嬉しく思います。

また、日頃楽しませてもらっているDXMには、今回このような謎の衝動を掻き立ててもらい、(クオリティは別として)最後までやり遂げることができて、感謝しております。

稚拙かつ、難解な文章が多かったと思います。ここまで読んでくださった全ての方に、感謝します。

また、ゲーム内、SNS(@YOSHI_raface)にて。今後とも、宜しくお願い致します。

 ありがとうございました。

 

YOSHI

 

 

 

【非公式】メシーカ アナザーストーリー 第3部

これは主の頭の中の妄想を膨らませた非公式のメシーカ。アナザーストーリーであるー。

 

※全4部構成、次回最終予定です。

 

目次

 

11.核心

ー。

幽玄なる壮大な大地、メシーカ。そこは魔力と活力で溢れ、生あるこの世界の全てに力を与えてくれる魅惑の土地。朝靄の戦いから数刻。昇る朝日が眩しくこの世界のはじまりを知らせている。森の奥からは小動物の声が聞こえ、木や土や、水の精が活発になる。どうやらこの近辺を覆っていた禍々しくも急き立てられたような異様な雰囲気は浄化されたようである。

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一行はケツァルコアトルを交え、今後の方針を話していた。激戦の果てにハデスとアテナは重篤な傷を負ったが、人智の及ばぬ持ち前の神力とフレイヤの加護によってハデスは回復、アテナは未だ目を覚まさないが闇のオーラは立ち消え心身に別状はないと思われた。

「まずはじめに、お前たちのこと洗いざらい話してもらおうか。事によっちゃァ、俺はお前たちをこの場で斬り捨てなきゃならねェ。」

この地を守る風の神、ケツァルコアトルの目が爛々とあやしく光っている。纏うオーラは一分の隙もなく、この場にいる全員を呑み込む勢いだ。

「では、私から説明しよう。」

ハデスが口火を切った。フレイヤがハデスの心身を慮るがハデスはそれを、いい、と断る。先程まで虚空を彷徨ったのだ。実際のところハデスの傷はその場に居座るだけで気を持っていかれそうな満身創痍の状態であった。それでもハデスがその役を買ったのは、ハデスが先の戦いで到達した解がこの先の皆に必要だと分かっていたからである。

「私の名はハデスと言う。この場に居る者は皆、貴君と同じく神である。この世界とは異なる次元でそれぞれが役目を持ち、その地に恩恵と秩序を与えている。貴君が今朝方対峙していた彼の女神も我々と同じ世界の者で、我々の仲間だ。」

ハデスは慎重に言葉を選びながら、異界の巨神に話し始める。そこまで聞いてケツァルコアトルは早計に目を見開いたが、正面に居座ったトールが目を配りまあ、待てよ。と合図することで収まった。

「時は我々の世界の時間軸で百六十日程前になる。我々の世界に突如この地へ繋がる門が開かれた。我々は未知の脅威に対し調査隊を派遣したが、待てども、待てども還らない。そこで我々が仲間の消息を確認するため、この地へ赴いたのが昨日のこと。その後の我々の動向については貴君も知る通りである。」

ケツァルコアトルは丸太のように太い両腕を組み、話を聞いている。まるで巨木がそこに座っているかのようだ。

「私がアテナとの戦いで得た結論を話そう。一つ。アテナを始め、この地に赴いた調査隊は何者かによって拘束、または霊的な力の強い者はマインドコントロールを受け自我を失っている。もう一つ。そのマインドコントロールを解く鍵は、“心の闇”だ。」

「洗脳だって?この世界の事は俺が一番よく知ってる。そんなことする奴ァ、一人も…。…ッ!」

ハデスが話を切り替え持論を展開すると、不当な見方に納得のいかない様子でケツァルコアトルはつい話を割ってしまったが、途中で何か気付いたように沈黙した。

「…何か思い当たる節があるようですな。」 

ハデスは話の腰を折られたことを気にせず、落ち着いた口調で切り返す。ケツァルコアトルは深く思考しながら自分の頭の中を整理するように、この世界のことを話し始めた。

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「この地、メシーカにはテスカトリポカっつう神がいる。俺が風でアイツが土。俺たちは二人で一対なんだ。俺たちの時間軸とお前たちのそれが一緒か分からねェが、大分前だよ。ある日を境にテスカはおかしくなっちまって、姿を消しちまったんだ。そっから徐々にこの世界の空気が乱れてきてな…。獣は狂って人を襲い始め、草木は命を縮めた。俺は日増しに濃くなる異変の影で、“高濃度のマナ帯域”をいくつか見つけた。モヤがかかったようなジメジメしたオーラだ。その特異点にコトの原因があると俺は踏んで、手始めに来た海岸で出食わしたのが昨日の女さ。」

…なるほど、だから贄、か。聡い者には話の全容が見え始めている。

「こりゃあーそのテスカなんとか、って奴が裏で糸引いてるに違いないっすねえ!」

アヌビスはいつもの調子で空気を読まず神経質なところを突っ込む。この男、聡さは群を抜いているが単に好奇心が強いのか、はたまた自分の胆を試しているのか。フレイヤにはアヌビスの意図が推し量りかね、堪らず溜息を吐いた。

「テスカはそんなんじゃねェ!」

案の定、ケツァルコアトルは拳を木の卓に叩きつけ怒りを露わにした。

「ひええ、怖っ!悪かったよ。」

アヌビスにフレイヤの睨むような深い意図はない。いつだって分かっていながらも、掻き乱したいだけなのである。そこから拾える他の者の傾向や性格はどこまでいっても副産物に過ぎない。

「大体見えて来ましたわね。ハデスさん、話を戻して、洗脳された者を解放する鍵とやらについて、もう少し詳しく教えていただけますか。」

フレイヤが仕切り直した。

「うむ。うまく言える自信が無いのだが…まあ聞いてくれ。アテナは自らを戦地に置く事で自身の大切な者を護ることを選んでいる。私はそんな彼女の優しさや慈しみが戦では弱さになると思い、認めることをしなかった。信じ切ることができなかった。それが彼女の心に闇を落とし、結果引きずりこまれたのだと思う。今、彼女が戻って来れたのは皆が想像する通りだ。私はアテナに対する認識を改めた。」

ハデスは自分のことを話すのが苦手な様子で、俯向きながら控えめにそう話した。

洗脳された者の心を拾う。それは、途方もない難題であった。

 

 

 

12.知己

ー。

ハデスの口から出た予想しなかった事態。ハデスがアテナを救い出せたのは奇跡と言っていい。

「ってことは、イシスや他の神さん達も何らかの心の闇に身を落としてる、ってことですかい。これは思ったより遥かに難儀そうだなあ。」
アヌビスはイシスの顔を思い浮かべ辟易する。

「左様。ただ倒せば良いというわけではない。闇に囚われた者が内に秘めた心の引け目や痛み、それを理解してやらねば、魂は縛られ続けるだろう。」

ハデスが一同の心中を推し量るような面持ちで話すと、皆自領の神に思いを馳せ、果たして救い出すことができるのか、と沈黙する。

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「関係ねえよ。」

トールに迷いはなかった。

「ロキが何考えてようが関係ねえ。この世界に迷惑かけてる、ってんならぶっ飛ばす。そんで縄つけてでも連れて帰るだけだ。」

兄貴ぃ、とアヌビスは拍子抜けした。

「兄貴、今の話聞いてました?」

「ハッハッハッハ!トール、お前ェ、そうだよな!俺がお前でも同じこと考えるぜ。」

ケツァルコアトルが腹を抱えて笑っている。無論ハデスの言う通り、対象の心の闇を見つけ、払拭してやらなければ救えないのは事実であったが、会ってみないことには話は何も進まないのだ。

「はんっ、まだお前たちのこと完全に信用した訳じゃねェが…今朝の一件からこの辺の生き物が息を吹き返したのは俺も解ってる。トールとお前たちを信じることにしよう。俺も協力するぜ。」

ケツァルコアトルは力強くそう言った。

「本当か?ウィンド、ありがてえ。恩に着るよ。」

トールはケツァルコアトルの事をウィンド、と呼ぶことにしたようだ。トールは気にいると何の脈絡もなく、本人に承諾を得ないまま勝手にあだ名で呼び出す。ケツァルコアトルは自分に付けられたあだ名をさして気にする様子もなく、二人でガッハ、ガッハと笑い合っている。そんな二人の様子を見ているとなんだか小難しく考えているのが馬鹿らしく思えてくるから不思議だ。フレイヤはそれを見ながらトールがこの世に二人と居ない百年の知己を得たのだと思った。

「してお前たち、目的地までどうやって行くつもりだ。」

ケツァルコアトルが話を切り替え遠征の手段について聞いた。如何に神の強大な力を以ってしても、生身でこの世界を渡り歩くのは広すぎるとケツァルコアトルは指摘する。

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「陸路は勧めねェ、効率が悪い。この先目的地まではジャングルや地下道、山や川を幾つも越えなきゃなんねェ。天然の要塞で異変に侵された獣どもがウジャウジャいる中、道無き道を進むことになる。そうしてる間に異変がこの世界を食っちまうかも分からねェ。」

しかしトール達の中にはマキナのような空間転移の力を持ち合わせる者がいない。一行には陸路を選ぶ他に、選択の余地はないと思われた。

「そこで提案なんだが、俺の風の力をお前たちに貸してやる。そうしたらお前たちは空を飛んで最短距離で目的地へ行くことが可能だ。時間はそうだな…特異点の放つオーラの距離から考えて、陽が両手の数ほど登る頃には目的地を全て周れるだろう。でも空の旅には陸路とは別の問題がある。ワイバーンだ。」

ワイバーンは竜の亜種でその眷属とされる飛竜の総称である。大型で気性が荒く、鎌のように太く鋭い牙とかぎ爪で一度捕捉した獲物を執拗に追い回して離さない。竜のように火を吐く種も中には居るらしい。ケツァルコアトル曰く、この世界で竜は悪の象徴とされ、竜にまつわる呪われた伝説が存在し、この世界の歴史は神々と竜の戦いであるということだった。トールはケツァルコアトルの話を聞きながらこの世界の竜を自分たちにおける巨人族のようなものと認識した。

「この先、空はワイバーンの庭になってる。最近ワイバーンの数が急に増えてよ。これも異変の影響だ。俺一人なら奴等をいかようにも振り切れるが流石に五人、十人に力を振り分け大所帯で移動したら戦闘は避けられねェだろう。ワイバーンは個体一匹一匹は敵わねェ相手じゃねえが、何十匹と囲まれたらいくらお前たちでも全滅だって有り得るだろうよ。」

トールと五分に渡り合った屈強な男がそう言うのだ。相当危険な道であることが容易に想像できる。トール達はここへ来る道中に遭遇したスキュラの戦魚の大群を思い返した。空は海上よりも身体の自由が利かないだろう。

「さァ、陸か、空か。お前達で選べ。」

ケツァルコアトルは一頻り説明を終えるとトール達の覚悟を問うように迫った。

 

 

 

13.決断

ー。

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一行はケツァルコアトルの問いに対し思慮していた。空を選べばその危険の対価に何十、何百倍も時間を短縮できるだろう。逆に陸路を選べば身の危険は大幅に減るだろうが当ての無い膨大な時間を掛けることとなる。この大地における異変が刻々と変化し、もはや守護する立場のケツァルコアトルにも全てを掌握できていないことは明らかである。加えて自分達は異界者。どんなところで足元を掬われ命が危険に晒されるかも分からない。しかしワイバーンの脅威は無視するにはあまりにも強大過ぎる。全滅しては意味がない。どちらを取っても正解とも不正解とも言い難かった。

「空だ。俺たちは空を行こう。」

アヌビスらの目まぐるしい逡巡は時間にして一秒か二秒。各自結論を出せない中、またしてもトールは即断即決そう言い切った。その表情から迷いなど微塵も感じない。

「兄貴、また念のため確認しますが風の旦那の話は聞いた上でそう言ったんですよね?」

トールの答えの速さにアヌビスが警戒して確認する。

「当たり前だろ!これはもう、俺たちだけの問題じゃなくなってる。早く行った方がいい。元より陸を行く他なかった俺たちにウィンドは力貸してくれる、っつってんだ。断る理由は作らねえ。」

断る理由は作らない、それはトールらしい答えだった。ケツァルコアトルはこの大地を守る役目を持つ、ある意味この中で誰よりもこの問題の当事者である。陸路は勧めない、と言ったのはささやかな感情の漏れであった。自身が護るべき大地が刻一刻とおかしくなっていくのを目の当たりにしながら、トール達に選択の余地を与えてくれたのである。それはケツァルコアトルの温情だった。保身を考える者が多い中、トールは小難しく考えずとも直感でそういう決断ができる。受けた情や礼があれば、自らのリスクなど気にしないからだ。

「私も空行きを支持する。無論リスクは無視できんが、どうやら俺たちには安穏と時間をかけても居られんらしい。」

ハデスがトールの意見に賛同しながら一方を指した。ハデスの向けた指の先には自分達がこの世界へ渡って来た次元のゲートがある。空間の中にぽっかり穴が空いたように大きく開いたその門は来た時と様子が異なり、漆黒であったはずの円は光を帯び、中心へ向けて渦巻くようにエネルギーが収束している。

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「な…っ。ゲートが…!」

何が原因でそうなったのか、そしてその事象が起こしうる結果を知る由は無かったが、恒久と思われたものにも変化がある。それは一行に自分達の世界へ帰れなくなることを想起させた。船乗達がざわざわと騒ぎ始める。

事態が事態である。アテナを保護し、問題の原因や他の調査隊の処遇もおおよそ予測がつく。ここで引き返してもトール達は当初与えられた任務を十分に全うしたと言える。だがハデスはトールの言葉を待たずに言った。

「行くのだろう、トールよ。今更止めはしない。皆を救い、全員で必ず帰ろう!」

共に戦い死線を越え、生まれた信頼がハデスを変えた。トールはハデスの意気を受け取り力強く頷く。それを見てアヌビスらもいよいよ心を決めたようだ。全体の士気が上がる中、そこでフレイヤが意外な提案を持ち出した。

「ジャンに目的地まで運んでもらいましょう。」

それは一行を救う奇策であった。

 

 

 

14.奇策

ー。

猫に連れて行ってもらおう。士気が上がり火照った空気の中フレイヤが意外な言葉で周囲の意表をつく。

ジャンとは、フレイヤが帯同している猫の名前である。叡智に長け思慮深いフレイヤがこの状況で冗談を言うわけがない。一同は誰一人茶化すことなくフレイヤの話に耳を傾けた。フレイヤは説くより見た方が早いと言わんばかりに一つ呪文を唱えると、今しがたフレイヤの胸元に包まれていた小さな猫がむくむくと大きく成長し、猛々しい姿に変貌した。背丈は並の帆船に迫り、巨漢が自慢のトールもジャンの腕にしがみ付けそうである。それを見て一同に大きな衝撃が走った。

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ケツァルコアトルさん、この子の大きさでも風の力を付与できるかしら。」

ショックで開いた口が塞がらないケツァルコアトルは戸惑いながらもやや遅れて問題ない、と返事をする。それを聞いてフレイヤは微笑むと、ジャンに一言ごめんね、と言って計画を話した。

「この子はただの猫ではありません。私の加護を受けた聖獣です。ジャンは光彩を利用した変態能力を持っていて、透明になれます。皆さんはこの子の毛の中に身を埋めて行けば、ワイバーンに気付かれることなく目的地まできっと行けますわ。」

フレイヤはそう言うとジャンに合図を送り、今度は透明にさせて見せた。ジャンの体が滲み出し、次第にゆっくりと背景に溶け込んで行く。これならば接触する程の超至近距離でなければまず分からないだろう。ウズメが確認のため近寄って手を前にかざすとふわっとした毛に触れた。

「すごい…。」

大胆な計画であった。しかしこれはフレイヤの策である。移動速度は神のそれをゆうに超え、ケツァルコアトルの力も分散させずに済む。効力の持続時間、解除条件、どれを聞いても目立った問題は浮かばない。メリット尽くしなのである。これで行こう、全員の意見がまとまるまで時間はかからなかった。

「おっさんは船のみんなとここに残ってくれ。救出は俺たちだけで行く。」

トールははじめからそう決めていた様子でハデスにそう言った。アヌビスらもその意見に賛同する。

「旦那、まだ立ってるのも辛いでしょーから、アテナさんと一緒に待っててくださいよ。ゲートのことも気になりますしね。何かあったら、念話で教えてください。」

念話とは霊的な力の高い一部の神に備わる能力で、物理的に離れた相手の頭の中へ直接語りかけることができる。ハデスは悪びれながらも、この身体で行っては返って足手まといになるやもしれん、と思い直し、トール達の意思を承諾した。

「何かあったら知らせる。お前達が戻ってくるまでに私は帰りの手段をどうにか用意しよう。武運を。」

ケツァルコアトルがジャンに風の力を施す。五人はジャンの体に乗り毛の中に身を埋めると、ハデスの視界から見えなくなった。

「じゃあ、行ってくるぜ!」

ジャンのぎゃう、という声でトール達は陸からぐんぐん離れる。羽も生えていないのに奇妙な感覚だった。息つく暇もなくあっという間に木々を飛越し、ハデスの姿が見えなくなると、トール達の視界いっぱいにメシーカの自然が広がった。

「す、すげえ…。」
この世界は美しかった。西日がきらきらと輝いて眩しい。

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「さァ、一気に行こう、先ずはここから一番近い丘陵地帯だ!」

ケツァルコアトルが号令し、フレイヤが合図を送ると、おおよそ考えられない凄まじい速度でジャンは走りだした。

これで良かったのだろうか、一行を送り出したハデスは答えのない思考に捉われそうになりながら、今の自身に出来る最良を尽くそう、と思い直した。野営の準備を指示する中、船乗の一人がハデスに駆け寄る。

アテナが目覚めたという報せであった。

 

 

 

15.仲間

ー。

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「ここは…。」

アテナがふと見上げた先には吸い込まれるような深い青と宝石を散りばめたように輝く星々が覆っている。美しい。それは果てない夢の続きを見ているようだった。この空がこの世のあらゆる咎を赦し包み込んでくれるようだ、アテナはそう思いながら目覚めた。

「目が覚めたか。」

ハデスが彼女の下で優しく声をかけると、アテナは全てを悟り、涙で顔面をくしゃくしゃにした。

「申し訳ございません。私…私…。」

自責、後悔、感謝、そして安堵。込み上がる想いが溢れそれ以上言葉が出てこない。

「良いのだ。今はゆっくりと休みなさい。然るべき時に、また立ち上がれるように。」

それだけ言うとハデスはアテナの下を去った。アテナは自身の弱さを痛感し、また庇護されていることに感謝しながら、強くなりたい、何度も噛み締めるようにそう思った。

一方、勢い良く飛び出したトール達は星散る夜空を背に目的地へ向け猛烈な速度で進行を続けていた。ジャンの夜に冴える発達した目と、比較的、日中活動するワイバーンの活動周期から、夜に歩を進めた方がより危険を回避し、効率よく先へ進めると判断してのことだった。ジャンはトール達を背に乗せ、宇宙のように広がる空を閃光の如く駆け抜けて行く。高度があるため酸素が薄く、常人であればとっくに意識を失っているところだが、そこは流石に神である。一同地上となんら変わらぬ様子で飄々としている。

「うひゃあ、外に頭出したら風に首持ってかれそうでしたよ。滅茶苦茶速いっすね、このネコ!」

アヌビスがジャンに畏敬の念を抱いている。勿論ジャンは万能ではない。フレイヤ曰く、太陽でも、月でも構わないが、媒介となる光が雲で陰るなどして失うと透明能力は効果を保持できないこと。また、ジャンは酷く臆病であるため戦力の期待はおろか、戦闘になった際はジャンを傷つけないよう細心の注意が必要であるとのことだった。

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ふと、夜空に照らされたウズメの顔がフレイヤに映る。ウズメは宙に浮かぶ星空を見上げながら黄昏に何か思い耽る様子だった。

「不安、ですか?」

フレイヤはウズメの心中を察して声を掛ける。

「あはは、参りました。フレイヤ様は何でも御見通しですね。」

ウズメははにかんで舌を少し出しながら微笑し、乱した心を落ち着かせるように自分の頭を叩いてそう答えた。

「私、スサノオ様を救える自信がないんです。私はトール様のように強くもないし、フレイヤ様のような機知も有りません。第一スサノオ様が何を考えてイズモ領を飛び出して行ったのかさえ、よく分からないんです。こんな私がスサノオ様の心を拾えるのかな、って。」

ウズメは余裕がないのか、或いはフレイヤに気を許したのか分からない。いつもと違った少し崩れた口調で胸の内をフレイヤに話した。皆口に出さずとも、似たような感情を抱いているに違いなかった。

「ウズメさんは謙遜しすぎですわ。」

フレイヤは何の含みも持たせず、手放しで思うことを言った。

「私もあの悪童の化身のようなロキの心など解りませんし、解りたくも有りません。もし救えなければそれで良いと思っています。開き直ってる分、私は質が悪いですね。ふふ、それでも…何とかなるような気がしています。私にはあなたのように優しく他を思いやれる方や、トールのような考え無しの無鉄砲、それでも周りから愛されるような“仲間”が居ますから。スサノオさんも、他の守護者も、皆私たちの仲間ですわ。自分でどうにもならなかった時は、仲間に全て委ねてしまいなさい。少なからず、それを厭う者はこの場に居ません。」

フレイヤ様。ありがとうござい…ます…!」

フレイヤの微笑みがウズメの心に優しく染み渡る。自分一人で戦ってるんじゃない、それは脆く崩れかけたウズメの心にとって、一筋の光明となった。自分に何ができるか、何もできないかも知れないけど、せめて前を向いていよう、ウズメはそう決心し、瞳を閉じた。

ジャンが割く空気の轟音をよそに神々は思い思いの時を過ごす。

「ロキ、待ってろよ。」

トールは夜空を見上げながらこの旅の終わりを微かに想像し、気を引き締めるのであった。

 

To be continued..

 

【非公式】メシーカ アナザーストーリー 第2部

これは主の頭の中の妄想を膨らませた非公式のメシーカ。アナザーストーリーであるー。

目次

 

06.目的

ー。

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天を覆い、のし掛かるような空と隆起する大地。緑は生命の胎動で溢れ、水の囁きは何処か落ち着きがない。一行が到達した地、メシーカは来訪者の存在を確実に捉え、こちらの様子を観察しているように感じられた。

「ここは…。」

神々の誰しもが強烈に感じる、刺さるような命の鼓動と自然エネルギー

「不思議な地ですわね。ここでは、風も、土も、火も、水も。まるで全てが合わさってひとつの大きな命のようですわ。先程からジャンの毛が逆立って止まりません。」

ジャンはフレイヤの下でフシュゥ、と息を荒げ苦しそうにしている。フレイヤは愛猫のジャンを優しくなだめながら感じる違和感を続ける。

「そしてその全てが何処か霞ががっている。この地ではこれが普通なのかも知れませんが、充ち満ちるエネルギーの一方で荒い息遣い、痛いくらいに攻撃的な重圧。まるで窮鼠が猫を噛む時のような印象を受けます。」

見渡す限り、目視でこちらに敵意を向ける者はなく、無事に上陸を果たせたようだ。人の姿は見えない。フレイヤの言う通り、小鳥や妖精の様子が何処かよそよそしく、必死めいている。異界の未知なる生命体が強大なパワーを持って突如現れたのだから、これが自然な反応だと解釈もできるが、その場に立つ他の神々もフレイヤの言葉に共感し、どうやらこの違和感の原因は自分たちの他にある、と考えた。

「ハデス様、野営地の準備、整いました。」

船頭の報告にハデスは頷き、労った。一行の眼前には生茂る密林が広がっている。それを抜けた先には広大な丘陵や切立つ山岳、何者かが建設した神殿や遺跡の類があることを一行は船の中から確認しており、この世界にはあらゆる自然と文化が内包されていると予想できた。

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「旅の目的を明確にし、期限を決める。」

ハデスは言った。

「目的はマキナ殿をはじめとするイアソン船団の所在を確認すること、またはそれに準拠する手掛かりの発見。それに加えて帰る手段の用意だ。可能な限り多くの命を助けたいが、ミイラ取りがミイラになっては敵わん。何よりも優先すべきは着いてきた船乗と貴様らの命であると肝に命じよ。」

ハデスはトールを一瞥したあと、あてもない彼方を見詰めながら続ける。

「自明の通り、どうやらここは俺たちの世界と似て非なるものだ。この地に満ちるエネルギーを転化すれば或いは未開の新たな呪文や能力を我々であれば得られるであろう。しかしそれは常に危険と同居している。その力が俺たちを蝕み、また吞み込もうとするかも分からん。期限は一月だ。結果如何に関係なく、その間でここを発つ。」

ハデスの言葉にはひとつひとつ、決意の重みが混じっている。各自ここに居る理由は様々ある様子だが、彼もまた並ならぬ覚悟を持ってここに立って居ることが伝わってくる。

「お、おい、ッおっさん!勝手に決めんなよ、結果は出すだろ。全員見つけようぜ、期限なんて作らねえでよ。俺たちなら適わない敵はいねぇだろ。」

トールは曇った表情でハデスの言葉に割って入った。

「トール。」

フレイヤが嗜めるが、トールの性格はそれを一回で聞くような構造になっていない。

「いや、だってよ。折角こうも大所帯でこんな辺境に苦労して来てよ、何の成果も挙げずに帰れるかってんだよ!」

貴様、とハデスがトールの勢いを折った。

「小僧の分際で分別を弁えぬ奴だ。何を気にしているかは知らんが、それ以上やりたければ貴様一人でやれ。命が朽ちるまでな!貴様の事情に俺たちを巻き込むな。」

なんだとお、刹那にトールの心は炎で包まれ、頰がカッと紅くなり、ハデスに食ってかかろうとした。咄嗟にアヌビスが体を張って止める。

「おぉっと!兄貴、そりゃあ不味いや。一回、収めましょ。助けたい気持ちは皆んな一緒ですって。一月でみんな見つけりゃいいんですから。ね?」

数秒の沈黙。空気がひりついている。ハデスは降りかかった熱を払うようにひとつふんっ、とため息を吐くとそれ以上言葉を発さずその場を発ってしまった。

「私達、食事の支度を手伝ってきますね。」

ウズメが慮り、控えめな様子でフレイヤと立ち去った。陽が沈みかけ、直に夜である。

「この世界にも夜ってあるんですねぇ。」

アヌビスはうつむくトールへそう声をかけた。

 

 

 

07.約束

ー。

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メシーカの夜。夜は陽で火照った体と精神を万物平等に癒してくれる。宴を囲う船団の外では夜虫のさえずりの他には風もなく、岸に寄せる波も穏やかで静かな夜だった。陸での大地に足をつけた食事はオリンポスの港を出立してからかれこれ一週間ぶりになる。船乗達は先のことなど忘れたように酒をくらい、はしゃいでいる。

「さっきはすまなかった、ビスケ。」

トールは酒も程々に、ゆらゆらと揺れる焚かれた火を見詰めながら素直に詫びた。アヌビスはええ、とひとつだけ頷き、トールの様子をそれとなく伺っている。トールが続けて何かを喋りたければ聞くし、そうでないなら他愛のない会話を適当に繋げばいいだろう。アヌビスはそう思った。普段ムードメーカーというにはやや勢いが余り、空気を読まず壊してばかりいるが、肝要な場面はしっかりと抑えられる賢さと優しさがアヌビスにはある。

「俺ァ、約束しててよ。」

旅は道連れ、一蓮托生。既に旅を始めているアヌビスにとって、トールの遠征理由など今更どうでも良かったが、どうやらトールは胸の内を話すつもりらしい。

「ロキを連れ帰る、ってシギュンに約束してんだ。」

シギュンさん、ってあのー」

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《療法手 シギュン》

高性能なヒーラー

 

シギュンは、ロキの妻である。彼女は慎ましい品性に富み、悪戯好きで移り気が激しく、また狡猾で嘘つきと悪の色濃いロキには異様とも言える相手であったが、彼女は一点の曇りなくロキを愛していた。これは後の話になるが、ロキがオーディンの息子バルドルを殺害後、地下牢に幽閉され顔面に毒を盛られる際もシギュンは甲斐甲斐しくロキを支え続ける。

「じゃあ意地でも引っ張って連れ帰らねぇと。」

アヌビスは穏やかな声でそう返した。それ以上の言葉は無粋であるし、必要なかった。トールの感情が熱しやすい点については一長一短があるものの、基本的に裏表のない漢気に溢れる快活なトールが約束をする、という行為には“必ず果たす”という意味が付いて回るし、約束を違えることはトールの自尊心が許さない。

「他の奴がどう思ってるかは知らねえが、俺ァロキのこと嫌いじゃねえ。何より未亡人は可哀想だろ。」

トールは笑って言った。例え自分自身の問題であったとしても、人には話を聞いてもらうだけで心が楽になり、視界が晴れることがある。それは人も、神も同じである。トールはアヌビスに溜め込んだ心のもやを拭ってもらった思いがした。遠くの席からトール達に気付かれぬよう、それとなく話を聞いていたフレイヤは全くもって世話が焼けますこと、そう思いながらも口元は優しく微笑んでいた。

長い、長い宴は続く。ウズメが得意の舞踊で皆を心酔させ、トールが合いの手に木打ちドラムを添えると、まるでここが異界の地であることなど忘れ、人と神の垣根を超えて、心の底から皆が笑いあった。そうして夜が更けていった。

ー贄を…。贄を捧げよ…!

それから数刻したであろうか。突然頭の中へ電流のように走る奇妙な声に神々は目を覚ました。どうやら今の声は霊的感覚の備わった神のみにしか伝わっていない様子で、船乗達は昨夜の甘い余韻を噛み締めるように、気持ちよさそうに眠り続けている。辺りは朝靄というには優しすぎる、特異な濃霧が包んでいる。

「アテナ…!ッ」

ハデスが何かを察知し、海岸へ駆け寄る。

そこにはアテナと一人の見知らぬ男が剣を交えていた。

 

 

 

08.邂逅

ー。

濃霧に包まれたメシーカの夜明け。一行は異界の地到着から二日目にして、イアソン船団の足跡を掴む。オリンポス領域のアテナを見つけたのだ。アテナは岸から少し離れた海上に立ち、一人の屈強な戦士と剣を交えている。

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「畏れるな、進め。」

濃霧によってトールらの視界は奪われていたが、伝わる覇気がアテナの存在を確信させる。使役する海梟グラウクスが男の周りを飛び交い、アテナの邪魔にならない絶妙な間で男の死角から応戦しているようであった。一方アテナと相見える男はトールを想起させる巨軀と威風堂々、百戦錬磨の貫禄を放出しており、雌雄はその男に傾くとその場に居合わせるどの神にも解った。

「アテナ!」

ハデスは血相を変えアテナの下へ走り出す。そこにはこれまで皆にハデスが見せた冷静さや周到さは微塵もなく、余裕が一切ない。ハデスにとってアテナは急所と呼んで間違いなさそうであった。

「ハデス様、お待ちください!」

フレイヤの声が虚しく木霊する。トールが電光石火の身のこなしでハデスの後を追った。

彼女を旅へ出した私の計算が甘かった、ハデスはこの旅の中、何度も、何度もそう反芻しては自身を責めた。また一方でアテナを信じよ、と心に戒めもした。そうした心の中の矛盾が旅の中で膿み、塞き止めていた感情のうねりが今、一気に解放されたのだ。

「アテナ、今助けるぞ!雷霆の牙よ、穿て!ケウラノスの制裁!」

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《ケウラノスの制裁》

オリンポスの主砲スペル

 

ハデスが詠唱すると閃光の煌めきがカッ、と眩くほとばしり雷鳴が轟く。

ードッシャーン!!

空を割く巨大な雷が男に直撃した。男はぐおお、と息を洩らし、膝を着く。

「アテナ、大丈夫か!」

男にはそっぽもくれずアテナの下へ駆け寄り、彼女の両肩を掴みながらハデスは問いかけ、その顔を見て不意に驚愕する。

「贄…。贄を…捧げよ…!」

アテナの口から発せられた言葉は、先程頭の中で聞いた悪魔のささやきとも取れるそれであった。

「おっさん、危ねえ!」

後を追って来たトールが叫ぶ。が、アテナの繰り出す槍が速い。ハデスはアテナの攻撃を辛うじて左腕で受ける事で致命傷を避けた。鈍い痛みがハデスに突き刺さる。

「私としたことが…。」

ハデスは自分へ向かったアテナの殺気を確かに感じた。これははたしてどういうことだ、ハデスは混乱し、思考が定まらずに次の手を逡巡する。すると間髪なく重い剣圧がハデスを猛襲する。トールがそれを鎚ミョルニルで受け止め、がぎん、と金属音が響き渡った。敵意の主は今しがたハデスの雷撃を受けた男である。空気がひりひりしている。

「なんだなんだァ?お前達、その女の仲間か?…にしてはそのおっさん腹ァ突かれてたよなァ。よく分からねえ!」

男は愉快そうに話す。

「しかしデケェ方の、よく俺の攻撃を受け止めやがったな。今まで沢山のやつと戦ってきたが過去に俺の攻撃を躱す奴、受け流す奴は居ても、真っ向から受け止めた奴は居ねェ。やり合う前に聞いて置きてェ。お前さん名は? 」

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《羽蛇神 ケツァルコアトル

 

男はトールの言葉を待たず自分から名乗りを上げた。

「俺の名は、ケツァルコアトル。メシーカの地を守る、風の神だ!」

それは一行にとって、運命の出会いであった。

 

 

 

09.雌雄

ー。

トールの目の前には万年を生きる伝説の巨木のように巨軀の男が立ち塞がっている。その男は足元が海上であるにも関わらず、地に根を張ったようにズッシリとした重量感を持ち、この大地の全てから愛されているような満ち満ちたエネルギーを滾らせている。ケツァルコアトルと名乗ったその男はトールがこれまで相手にして来たどの巨人族よりも大きかった。

「おっさん、そっちは頼むぜ。俺は助太刀に行けそうにねえからよ。」

トールの言葉を聞き、承知した、と頷くとハデスはアテナを陽動し互いに被害の出ない距離を取る。一度交わした拳でトールは理解していた。この男は自分がこれまで対峙してきたどの男より屈強であると。周囲は靄が晴れ、パレットに乗せた絵の具のように鮮やかで優しい光彩が世界を構築している。光を纏ったケツァルコアトルは神々しく、より強大に見えた。

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「俺の名前はトール。雷神トールだ。」

ケツァルコアトルは満天の笑みで歯をむき出しながらそうか、と言う。トールも笑った。互いに未だ出会ったことのない脅威を相見え、心が高揚した。嬉しかった。この男であれば、全力を出せる、俺はまだまだ強くなって行ける。互いがそう認識した。

「お前達が何者ンかは知らねェ。だが、そんな事はどうだっていい、今を楽しもうじゃねェか。さァ来なァ、勝負しようぜ!」

ケツァルコアトルが地を力強く蹴ると一気に距離を詰め、トールの眼前で剣を振りかざす。速い、トールがそう思う隙すら与えない猛攻をケツァルコアトルは繰り出した。一撃一撃が戦車を引くように重く、かまいたちのように斬れ味がある。

ーグァギャン、グァギャン。

受け止める圧力が有り余り、逃げ場を無くしたエネルギーが衝撃波となって両者の足場を波立たせる。トールが反撃すると、ケツァルコアトルは風の力でそれを受け流す。

「…分からねェ。俺の拳は軽いか。お前さん、さっきから俺の一撃一撃を何故片手で受け止められるんだ。」

ケツァルコアトルはトールと対峙し、その異変に気付いた。腕っ節に絶対の自信を持っている自分が、赤子を捻るが如く、片腕であしらわれているのだ。これ程の屈辱をケツァルコアトルは未だかつて経験したことがない。無論ケツァルコアトルの感情は他所に、トールとて一回一回が決して予断を許さない緊迫した攻防である。一度気を許せば、一気に全身持っていかれる。トールはそう感じていたが、ケツァルコアトルの疑問も至極当然のものであった。

「俺ァ、腕力で誰にも負けないんだ。」
トールは笑いながらそう言った。トールには鎚ミョルニルと合わせ、トールをトールたらしめんとする重要な神器が三種あると言われている。その内の一種が力帯メギンギョルズである。メギンギョルズはトールの腹に付ける力帯で、トールの神力を二倍に引き上げる効果を持っている。

「そうかい。ま、戦で種明かしはしねェわな。それならこいつァどうだ、来いッ、鏡泉!」

ケツァルコアトルがそう叫ぶと、地脈が唸り、水面が青ざめそこに見たことのない魔法陣が現れる。刹那、ケツァルコアトルが二人になってトールを襲い出す。

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《鏡泉の波紋》

絶対有利の盤面を作り出すエンドスペル

 

「なっ、コリャア驚いた…!」

トールは必死に剣圧を殺す。何が起きたのか分からない。突如目の前の男が二人になり同じ膂力で襲ってくるのだ。

「ハッ、両腕使ってくれたなァ。ドンドン行くぜ!せいっ。」

ケツァルコアトルは息吹き宙を舞う。両者の力は均衡し、戦いの余波はこの大地へとてつもない影響を与えそうであった。

幾つ拳を交換したであろうか、互いに時間を忘れて汗と血に塗れた後、トールは剣圧から伝わるケツァルコアトルの精神や息遣いを直で受けるうちに、気付けば親愛にも敬愛にも似た感覚を抱いていた。

「出会った場所がここじゃなかったら俺たち最高の友になれた気がする。」

こんなにも気持ちが晴れる戦いは記憶に古く、トールは不器用ながらに相対す男へ最上の賛辞を送ると、ケツァルコアトルもトールの言葉に呼応し、俺も同じだ、と告げた。

「でも俺やらなきゃならねえことがあってよ、悠長にしてられねえんだ。悪いが、俺も全力だ…!」

トールがそう言うと、大地が震え上がり、トールの赤髪はゆらゆらと逆立ち、赤目がカッ、と異様な光を帯び始める。嵐のようなただならぬ気配にケツァルコアトルは気圧される、という感覚を生涯で初めて抱いた。

「ぐうぉおおおお…!」

トールのテンションが最高潮に達する刹那、突如彼方から氷の矢が戦場を突き刺す。

グングニルの穿通!」

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グングニルの穿通》

高コストAoEアスガルドの主要スペル

 

「ぐおあっ、タダではやられんぞ!」

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「一体、何だってんだよ!」

過熱した戦いに水を差されたトールは怒った。

「トール、そこまでです。どうやらそのお方とは、争う必要が無いようです。」

フレイヤはトールを諭すように言った。

「そして、そこの御仁。あなたにとって私たちもまた、敵意を向ける対象ではないようです。どうか一度剣を収め、私達の話を聞いてはくださいませんか。」

フレイヤの意図するところは分からないが、二人は交えた拳によって気心が通っていたため、その申し出に対し強い抵抗はなかった。むしろ心の何処かで安堵した。

「こんだけ足場固められちゃ続けようにも続けられねえ、ってんだよ。」

トールはそう言って、二人は笑った。

 

 

 

10.信頼

ー。

時はトールがケツァルコアトルに名を語り、拳を交え始める頃まで遡る。

トールと距離を取ったハデスの正面には、無垢の女神、アテナが立っている。アテナはケツァルコアトル戦によって四肢の自由の多くを失っていたが、息を荒げながらも戦意は失わず、ハデスを今の敵と認識し凄みを利かせ目を光らせている。

冷静を取り戻したハデスはアテナを見据え、この戦いの未来を頭の中で俯瞰していた。この短い時間の中でハデスに分かったことは、二点ある。一つは今対峙する自分へ刃を向けた、儚くも意志ある彼の処女は、紛れもなくアテナ本人であること。もう一つは、アテナを覆う特異なオーラの存在。それらが導き出すは、アテナが何者かによりマインドコントロールを受けているという答えであった。しかし、解呪の仕方が分からない。故郷では師であり、兄のような存在である自分が幾ら問い掛けようとも、得られる答えは自分へ向ける敵意なのである。

「アテナよ。済まないが少々付き合ってもらうぞ。千の雷よ、連なれ。ゼウスの降雷!」

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《ゼウスの降雷》

優秀な縦範囲AoE

 

「断ずるは紛う事なき一の罪。己へ問え、テミスの裁定!」

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《テミスの裁定》

高火力のユニットを一撃で落とす優れたスペル

 

ハデスは連続して魔法を繰り出し、アテナに猛攻を始めた。殺気は込めずとも、その一打一打が致命傷となっておかしくはない攻撃である。アテナは足元にある潤沢な水で周囲を覆い、身をガードするがハデスの一閃は軽くその壁を突き通す。

「逃げるな!日和ってばかりでは、道は拓けぬぞ!」

ぐわぁあ、とアテナが高く悲鳴を上げる。ハデスは故郷で自分が彼女へ手解きしていた日々を思い出していた。

「爆ぜろ!ッ」

高密度のマジックボールを休む間も無く連続で打ち込む。

アテナよ…、済まぬ。これは私の誤ちであった。お主は永遠に穢れなき乙女で有り続ければ良い。旅を終わりにしよう。ハデスは心の中でそう強く念じながら、攻撃を続ける。

「わ…私…は…!」

ふとアテナの意思を感じ、ハデスは耳を貸す。

「私は…!負けない!皆の命を、私が、守る…!」

それはアテナの深層意識が表に出たのか分からない。しかし、ハデスの心を強く打った。

「私は…!戦いを止める訳には、行かない!」

咄嗟に出た露わになるアテナの心。その想いにハデスは涙した。お主を突き動かすその源はどこにある、何故そうも強く有りたいのだ。ハデスが想いを巡らせていると、ドッ、という鈍い音がする。体の自由が効かない。アテナの渾身の一撃が、ハデスの腹を貫いていた。

「アテナよ…。いつのときも、お前は優しく在りなさい。」

今わの際を察したハデスはアテナに最期の言葉を送る。武運を、そう言い残し、精神が遥か遠くへ吸い寄せられそうになった刹那、アテナの記憶がハデスの頭の中へ走馬灯のように入ってきた。それは、メシーカの戦いの記憶であった。

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ーくっ、これ以上は戦局が持ちそうに有りません。皆さんは先へ進んでください。

ー目的は!そうではなかった筈です!

ー此処で全員が絶命するより、幾らかはまともでしょう。

ー安心してください。私の命を賭して、あなた方を必ず守り抜きます!

 

入り込んできたアテナの記憶は、アテナが高潔な精神を持ち合わせる、確固たるひとりの騎士であるという証明であった。絶体絶命の状況下、アテナが重んじたのは他の命と強く有りたいという純粋な志。自分がボロボロになり果てながらも尚、こんなにもアテナは仲間を、弱き者を、庇い護ろうとしていたのだ。

「お前は…もう十分に、ひとりの立派な騎士である。」

ハデスはアテナの成長とその精神を心から賞賛し、心が洗われた想いがした。

そこでハデスの精神は戻った。朦朧とした意識の中、ハデスはアテナに目をやると、彼女の身は光で包まれ、覆っていた禍々しいオーラがゆっくり溶けていく。これは…、そうか。お前が求めていたものは…。ハデスは理解した。アテナが秘めたたった一つの想い、それは家族や他の皆から“認めてもらうこと”であった。

「や、やべぇ、姉さん、旦那が大変だ」

遠くでアヌビスの声が聞こえる。駆け寄ったフレイヤは治癒の力でハデスとアテナを回復する。

「旦那、無茶しましたね。」

アヌビスの緊張走った顔がハデスにはやけに可笑しく写る。

「そうだな、少しは労わる気になったか」

ハデスは皮肉を言いながら、この旅で初めて笑った。

  

To be continued..

 

【非公式】メシーカ アナザーストーリー 第1部

これは主の頭の中の妄想を膨らませた非公式のメシーカ。アナザーストーリーであるー。

 

目次

 

01.要請

ー。

時はメシーカの大地にてテスカトリポカ戦によるマキナらの撤退、航海長イアソン一行の拉致から三月ほど経過していた。

 

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《戦略神 オーディン

「おかしいっ!ロキが彼の地へ出立してからかれこれ半年になろうとしておる。別次元へのゲートは以前開かれたまま、問題が解決された様子もない。ロキは一体何をしておるのだ!」

彼の名はオーディンアスガルド領域を統治する戦争と死を司る主神である。

 

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《豊穣神 フレイヤ

「うーん、ゲートへの入り口はオリンポス領海、海洋オケアニドの北方と伺っておりますから通常であればもう遠征から帰っていてもおかしくはありませんが…。はっ!ロキのことですからまたよからぬ策を講じてマキナ様の足を引っ張っているに違いありませんわ!」

彼女の名はフレイヤ。美、愛、豊穣、戦いを司る神である。フレイヤが合いの手にオーディンへ返事し、またよからぬ邪推をはじめている。

「そのロキを手懐けるに足る器量とマキナ殿を判断したからこそ、儂はあの灰汁が強いロキの遠征を認めておる。フレイヤの申す通り、彼の方の実力であればもう帰途へついていても良いはずじゃ。それがどうしたことか、使い魔フギンの定期連絡すら断たれて久しい。考えたくはないが何かあったと…!ぐぬぅう…!!」

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《伝書鴉 フギン》

貴重なドローソース。

 

硬直したオーディンの顔は今にも兜の角を真っ二つにし飛び出して行きそうな気配を醸している。その気を察知し、フレイヤはまたか、と思った。覇者の常とも言うべきかオーディンもまた、一度思考が一方へ傾くとその思考へのめり込み手がつけられない荒々しさを持っている。

 

「いいぜ。」

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雷電神 トール》

 「オーディンのとっつぁん、そう鼻息荒くすんな。俺がちょっくら様子を見てきてやるよ。丁度トロール大討伐の勅命もテュールのおっさんがひとりでバッタバッタ倒しまくっちまったからそろそろ収束しそうでよ。力が有り余ってるんだ。」

彼の名はトール。雷神の名を持つアスガルド領で兵達のリーダー的存在。快活で豪胆、また優しい彼に兵の多くは心酔し、“兄貴”と慕っている。トールの目には事態に対し滾る自信と好奇で溢れていた。

「まあ。楽しそう。」

フレイヤはにこにこした表情を繕いながらも内心は既に人ごとになっている。

「ふぅむ、…お前には平時、兵達の統率を任せておるが事態が事態じゃ。国の防護はヘイムダルらに任せるとして…どれ。行ってくれるか。」

オーディンはもう鼻から先にトールへ遠征の依頼を出すことを心に決めていた様子で、トールの申し出を歓迎した。

「そう来なくっちゃよお!へへへ。オーディンのとっつぁん、ありがとよ。ちょっくら行ってくるわ!」

トールの行動は早い。疾風迅雷。考えるよりも行動が先に出る彼の性格は幾多の戦地で功績を挙げる助力となったが、単身乗り込もうとするトールをオーディンは止めた。

「これ、これ。待て。ーフレイヤ、お前も一緒に付いていきなさい。」

「なっ!」

それにはトールも意外な様子で二の句を返せない。

「な、な、な、私?」

もうこの話はトールが行っておしまい。愛猫のジャンと今日はどのお花畑で遊びましょう。そう考えていた矢先のことだった。

「左様。各世界の代表を揃えたあのマキナ殿の団体が消息を断つというのは異常の極み。如何にミョルニルの加護を受けるトールを以ってしても、今回ひとりでは荷が重かろう。お前がトールを助けてあげなさい。ニョルズには私から伝えておく。そしてトールよ、今回の遠征は現地視察のみじゃ。目的は異界の地で何が起きているのか、マキナ殿らが消息を絶った手掛かりを掴むまでとする。深入りしひとりで事態を解決するなどとはゆめゆめ思わぬよう、心せい。」

オーディンの意志は揺らがない。一度決めた事を曲げる性格ではない事をこの領域に住まう者なら誰もが知っている。これにはフレイヤも内心泣きながら恐ろしい程に晴れやかな笑顔で要請を受けた。

「かしこまりましたわ。」

(こりゃあ、おかしな雲行きになっちまったぜ。ひとりで気のまま異界の怪をギッタギタに打ちのめして冒険するつもりがよぉ、フレイヤの姉貴とじゃ、やりづらいぜ。)

オーディンの意外な要請に対しトールもまた心に一抹のざらつきを残した。

 

 

 

02.出立

ー。

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「ようし、じゃあ、行くとすっか。」

アスガルド領域を出、トールはオーディンに一人突っ走らぬよう釘を刺されたことも今となっては忘れた様子で、無邪気にそう言った。

「あなたと一緒に異界への調査だなんて、主神もどうかなさっているわ。どうせこのような汗くさいお仕事ならばフレイのお兄様にお願いされたら良かったのに。今日はジャンちゃんと森林へ幻の霊鹿エイクスュルニルを探しに出かけようとしてましたのに!どうしてこうなってしまったのでしょう。ああ…。ああ。」

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《霊鹿 エイクスュルニル》

有利交換を助ける優れた高密度のバッファー。

 

フレイヤはトールの言葉に耳もくれず一人でブツブツ呟いている。

「エイクは子供の前にしか姿を現さねえよぉ。まあまあ、フレイヤの姉貴、乗りかかった船だ、どうせなら楽しくいこうぜ!はっはっは。」

あどけない顔で無邪気に笑うトールを見てフレイヤは心にふつふつと込み上げる黒い感情を持っていると、その時後ろから声をかける者がいた。

 

「お待ちください。」

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 《舞踊神 アメノウズメ》

「トール様。フレイヤ様。お久しぶりでございます。イズモ領のウズメにございます。」

そこにはイズモ領域のアメノウズメが立っていた。後ろを見渡すとオリンポス領域のハデス、ルクソール領域のアヌビス、トリニティ領域のラファエルらの連々も揃い踏みで集結している。

「こ、こりゃあ、どういうことだ…?」

普段は万事、細いことなど知ったことか、という豪放な性格のトールもこの事態は流石に戸惑った。各領土の要人ならぬ要神が一同集結しているともなると、マキナ達がかつて行ったものと等しく、それはごくごく自然な反応であった。

「旧知の友と呼べる御方達に対し、背後から声がけするなどという武士の恥をどうかお赦しください。ここへ皆々様がお集まりになられた目的は、全員一緒にございます。どうか、ウズメ達もご一緒させていただきたく。」

トールはウズメらとかねてより存在する辺境の闘技場にて旧知の関係である。辺境の闘技場で行われる祭事は各領域間の希薄な関係性の歴史上で唯一古より遵守され続けて来た。各領、己が領土の力を誇示するように自領の主要な神を祭事に出すことから、各領内で代表格の神の間では少し特殊な顔見知の関係が構築されていた。

ウズメは礼節を重んじ、清く正しく高尚な精神を持っているイズモ領域の神。そんなウズメをトールは高く評価している。どうやら他の領域の面々は件の事態に対し意思の疎通が既に取れているようで、一番疎いのはトール達のようであった。フレイヤはそれに気付くと同時に嵌められた、と思いまた独り言をはじめる。

 

「んまぁーまあまあ!どうせここにいるヤツらみんな顔見知りだしよ、細い挨拶なんて抜きにして早く出発しようぜ?んなっ!」

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《葬送神 アヌビス》

アヌビスがウズメの良識ある挨拶を弛緩したトーンで台無しにする。 軽々としたアヌビスの言動は空気を読む心持ちすら感じられないが、他の心の機微に聡く、トールは話の早いやつ、と嫌いではない。

「ビスケじゃないか。」

「まったその名前で呼んでえ。ビスケのケの字はどっから来たんです、トールの兄貴。まぁいいかあ、どーも。」

トールは自分が気に入った、という自覚を持ったあらゆる万物に対し、よく分からないあだ名を付ける癖がある。アヌビスはトールから呼ばれるそのあだ名をあまり気に入って居ないらしいが、言及してもあまり明朗な答えが返ってこないことを察知し深く追求はしない。

「あと…後ろの二人は…。」

 

「どうして私がこのような下賤共と…。メタトロン様…。」

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《聖癒の大天使 ラファエル》

 

「ふんっ。」

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《地底神 ハデス》

残り二人は挨拶もせず、思い思いに思考を巡らせている様子だった。トリニティ領域が要神を派遣するのは取分け異例で、

 「無愛想だなあ。でもマジか?こりゃあいよいよ、おかしな雲行きになっちまったぜ…。」

トールは内心で軽率に異界行きを申し出た自分の言動を少し後悔した。

「トールの兄貴、めんどくせぇ、って顔に出てるぜ〜?フレイヤの姉さんもよろしくな!さあ、行った、行った!」

フレイヤのくぐもった表情を見ながら、アメンが今回の要請をオシリスではなく俺に依頼したのはフレイヤの姉さんが居るからだな、とアメンの見えない意図を感じ取るアヌビスだった。

「…惚れっぽいからなあ。」

 

 

 

03.強襲

ー。

「海が、荒れているな。」

アスガルドを出立し、オリンポス領海、件の異界ゲート近域に差し掛かるなり、ハデスは開口一番そう切り出した。

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「え?なんだって?俺には夕凪にたなびく穏やかな海に見えるが。」

トールを始めとする他の神にはとてもハデスの言葉が信じられない。氷と土が自身の構築する世界の大半を占めるトールにとって、海が内包する水も、起こす波も、潮を香りを纏うその風も全てが新鮮に写る。

「おのれ…!」

ハデスはそう呟くと、また無口になる。

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アテナイの操舵手》

兵士サーチ。 兵士は有能が多いため活躍の機会は多いだろう。

 

「は、ハデス様、脅かしは無しですぜ…。こちとら急遽船を出せって言われて人数はギリギリ、艤装や兵装もそこまで整ってねえんだ。その上海難に見舞われちまうとなりゃあ、干上がっちまう。」

アテナイの操舵手は怯えながらそう言った。舵取る先、大男の二の腕は恐怖で震えている。それもそのはず、海を象徴とするオリンポス、その神々の言葉は巫女や海を知り尽くした同業の者の助言など比較にならない程に絶対的な効力があるのだ。その神が、“荒れている”と言う事は、すなわちこの先絶対の苦難を暗示していた。

「まあ、なんとでもなるだろ!そりゃあ出発前はめんどくせえことになっちまった、って思いもしたけどよ、各領の主要神が揃ってんだ、オオダコやオオイカの一匹や二匹が出てくれようもんなら旅の門出に華を添える、ってもんだぜ!」

トールは最初こそ面食らい戸惑いを見せたものの、出立から一週間もした今となってはカラッとした表情を見せ、戦いはまだか、まだかと胸を高鳴らせていた。

「舵手の方達がこれほどまでに怯えているのにトールったら無神経ですわ。だから私はあなたとの旅は嫌だったのに。舵手の皆さま、心配はいりません。皆に、愛の施しを。」

フレイヤの言葉は煌めく聖水が如く、舵手の心へ浸透し安堵させた。それはいいとして、言ってもどう仕様もないことを言うことを忘れないのは女の常か。

「女神様…!ありがてぇ、ありがてえ。」

舵手がそう感謝の言葉を言い終えるが先か事態が先か、突如船の後部甲板からぐあん、という怪音と同時に水夫の悲鳴が聞こえる。

「ひ、ひぃ…ひいい!け、ケートス…ケートスが出たぞぉ!」

「グヮギャオォオン」

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《大海獣 ケートス》

海洋に乗ったケートスは非常に脅威

 

海獣ケートス。気性の荒い海のどう猛な捕食者。ケートスの腹の中には街が丸々ひとつ入っているという逸話を持ついわくのモンスターだ。そのケートスが船に百は人を乗せるだろう大帆船の後板に突如躍り出た。気づけば周囲の地平は渦巻き、天より豪風と叩きつけるような強い雨。一変して大嵐へと表情を変えている。

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「突然すぎんだろぉ!いきますか、兄貴ッ!」

アヌビスは瞬時に状況を理解し、トールを誘った。

「冗談が本当になっちまった。言霊ってやつかよ、すまねえな、舵手さんよ。しかしこいつぁ正真正銘の大船だ、安心してくれ。」

トールは舵手へ悪びれながらそう言い残し、内心では長い船旅の退屈を打破するこの状況をこれよしと歓迎しながら甲板へ向かった。

「爆ぜろ…ッ!」

 ハデスのマジックボールがケートスの首に直撃する。どうやらハデスは怪異の気配をいち早く察知し、先回りをしていたようだ。

ーギャウゥン。

ケートスは苦しそうに咆哮し無作為に物資や甲板へ頭を打ち付ける。船は過度な重圧に悲鳴をあげてぐらぐらと揺れた。

「こうなること知ってたんなら教えてくれても良かったんだぜぇ!ハデスの旦那ッ!手元が狂ってそのソウル魔法が自分の顔面に当たらないよう気をつけなッ!そらっ、ピラミッドの瘴気!」

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《ピラミッドの瘴気》

対象を弱体化させるルクソールの主要スペル

 

駆けつけたアヌビスはケートスへ弱体魔法を放ちながらハデスに皮肉をたしなめる。

「…ふんっ。」

「相変わらず、無口だなあ旦那は。」

両者の関係が改善するには共に過ごす時間と経験がいささか足りないようであった。

ーギャゴォオン。

緑の毒々しい瘴気に包まれたケートスは苦しそうな悲鳴をあげながら黒い水中へ溶けて行く。

「もうやっちまったのかよ。カーッ、流石に手が早いな、ビスケ。」

少し遅れて駆けつけたトールは戦況を見るなり事態の収束を判断し、アヌビスへ声をかける。

「兄貴、その言い草どうなんです?…いや。まあ、そのおいらは鼻が効くもんで…どうやらまだ終わってなー。」

ーゴゥっ。

刹那、轟音がアヌビスの言葉をかき消す。

「…ん、なんだって?」

言葉を途中で辞めたアヌビスにトールは次の句を促す。

「 おいおい、アヌビス。」

ーゴゴォーゥっ。

「聞こえねえかい?兄貴。」

「何がだ。」

ーゴゴォーゥ。

ードゥッ、…ドッ、ドッ、ドッ。

ードゴ、ゴゴゴゴゴゴ。

「はは。こいつぁ、ちょっとヤバイかも知れませんぜ、兄貴。」

体中に備わるあらゆる危険察知能力が警鐘を鳴らし、トールの体を全身ピリピリとあわ立たせる。

「ああ、俺にも分かったよ。」

 

 

 

04.突入

ー。

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《スキュラの戦魚》

相手のフェイスへ直接ダメージの飛ぶ希少種。

 

「総員、帆を広げ全速前進!急げ。」

ハデスが叫んだ。

 ーシィギュァアアア!アアア!

後方から現れたのは、全長三メートルをゆうに超し肉は愚か鉄さえも噛み砕き食らうスキュラの戦魚の大群であった。地鳴りのように聴こえた奇怪な音の正体は戦魚が高速でこの船めがけ大移動する音だったのだ。よくある船乗たちの海難談で数匹の戦魚に襲われ、小・中帆船が沈められると言った話はポピュラーで、スキュラの戦魚を単体、或いは同時に数匹遭遇することは然程珍しくない。

「おいおい、この数…。五十、いや、百を超えてるぞ!」

未曾有の天災と言える。トールとアヌビスの眼前を戦魚の大群が真っ黒に塗り潰し、一斉に船めがけ襲い掛かる。嵐はより一層荒々しさを増し訓練された水夫ら船員でさえ最早まともに立つことが怪しくなっている。

「小僧ども、呆けてないで手を貸せ。逃げるぞ。俺は操舵席へ向かう。あとは分かるな。」

ハデスには今の事態に対する最善の策が見えていた。

「さっすが年の功、ってやつですかねぇ〜!ッ逃げるが勝ち!兄貴、自分は砲台室へ行きます。ここは任せましたぜ。」

アヌビスは突き刺すような強い雨粒と強風に煽られながらも身軽に砲台室へ向かった。

「ははっ、全身泡立って仕方ねえ。怪我したやつは中に入ってな、おラァ、行くぞ!」

トールは叫び、自らボルテージを上げ戦魚の群れに飛び出した。

「オラオラオラオラぁ!」

鋼鉄を纏っていると錯覚するほどに鍛え抜かれた分厚く強靱なトールの肉体はどんな体勢であっても重心を失わず、身の丈ほど大きくした鎚ミョルニルをあらゆる角度から力一杯かなぐり回し、竜巻が呑み込むそれの如く、片っ端から次々と戦魚達を倒していく。鎚ミョルニルはどれほど強く打ち付けようと決して壊れず、大きさを自在に変えることや、的へ向け投げれば必ず命中し、再び手に戻るという性質を持っているトールの頼もしい相棒だ。

ーキシャァアアアッ。

戦魚達はトールの力量を推し測り、目標を帆船へ切り替える。

「おいおい、親玉はいねえのか、こいつぁキリがねぇ。」

トールは雨風で視界の悪い中それらしき目標を探る。

 

「ーバルドルの閃光!」

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バルドルの閃光》

軽コストAoEアスガルドの主要スペル

 

 ーキーン。

後方からフレイヤの支援が届いた。

「ぐおあっ、タダではやられんぞ!」

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ーシィャアアア。

戦魚の群れに浴びせたその呪文は宙へ弧を描き一瞬の閃光の後空気を、また水を伝い、辺りを焦がした。

ーギィ、ギィイ。

自分たちの知らない攻撃を受けた戦魚達はひるみ、こちらの動向を伺っている。その機をハデスは見逃さなかった。

「砲台、打て。全力で振り抜ける。」

船は荒れ狂う波を越え、ゲートに向かいひた走る。

「ゲートが見えたぞ。」

ぐあんぐあんと高波弾け合う視線のその先、海上にあんぐりと口を開けるように漆黒の闇が眼前いっぱいに広がっている。

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ーキシューッ、シューッ。

戦魚の群れは逃げる餌を逃すまいとキシキシ歯を立てて迫ってくる。

「くぅ、これ以上は、船が逝っちまう」

舵手が悲鳴をあげた。構わない、進め。ハデスは襲い来る戦魚を捌きながらそう命令する。

 「ゲートに入りますぜッ!」

眼前に広がる巨大な黒は立ち塞がる巨大な岩にも、大陸にも見え、船首がゲートへ触れる刹那ぶつかる、と船員の誰しもが思った。

「イッけぇええーーッ!」

ーとゥン…ッ。

ーキィシャアアア。

八方を覆い尽くしていた戦魚達の歯軋り音が背中から、また遠い後方から、次第に小さくなっていく。

ーシューッ、キシューッ。
ーシュー…、シュー……。……。

 

……。

周囲は暗闇と無音に包まれた。今起こっていた強風も、雨も、波のうねりも感じられない。

「無事にゲートへ侵入できたようだな。」

ハデスは眉ひとつ動かさずそう言った。

 

 

 

05.到着

ー。

ゲート侵入から二時間。

周囲を包んだ暗闇は次第に晴れ、薄く蒼い宇宙のような空間の中を一行は進んでいた。

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天を仰げばそこには無数の、どの文明のものか判別のつかない、どこの勢力にも属することのない魔法陣が蝋燭のようにぼぅ、っと浮かび上がり、それは夜空を彩る星のように温かい。

 

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「皆様ご無事で何よりです。死者は出ていないようで、とりあえずは何より、と言ったところでしょうか。」

治療班の陣頭指揮とまた自らも怪我人の介護を行なっていたウズメは安堵した表情でそう言った。甲斐甲斐しく世話をした様子がウズメの額に浮かぶ汗から読んで取れる。

「いやぁ〜いきなりヤバかったっすね〜!おいら久しぶりに生きてるーっ、て感じしましたよ。」

アヌビスはあっけらかんとしている。船員達は一時のパニックから精神が戻り落ち着く者、前途に悲観する者、奮い立つ者とそれぞれに別れた。船の被害状況は深刻で、竜骨を損傷していることが判っている。竜骨とは船を支える基盤の働きを担い、船の生命線といえる重要な箇所である。現在はゲート内に満ちる謎の浮力による誘導で船の舵を取らずとも勝手にゲートの意思のまま船は進むが、帰途は別手段を用意する必要が生まれた。

「トール。」

フレイヤが真剣な眼差しでトールを見つめる。

「あなたも先の戦いで承知していると思いますが、どうやらこの旅は悠々と遠足気分でいられる程優しいものでは到底無いようです。主神が申されたこと、分かっていますね。深入りは禁物です。」

「わぁーかってる、俺は戦神だ。押し引きは心得てる。」

フレイヤはそれならいいのですが、とは言わず無言で立ち去った。それを見てトールは参ったなぁ、と思った。

それから数刻して、船の進行先にまばゆい光が集まり始め、時の経過と共にその光は次第に大きく、船を包み込んでいった。

 

「見、見ろよ…!」

何処からともなく希望とも憂いとも取れる細い声で誰かがそう言う。

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一行の眼前に降臨するは彼の地、メシーカ。

魔力と幽玄の大地。到着であった。

「着いたな。」

トールは自信に満ちた面持ちで、その目は一線にメシーカの地を捉えている。

「たっ、大変ですっ!」

船員達が騒ぐ。一体どうしたのだ、ハデスは不機嫌そうに尋ねると、突拍子も無い答えが返ってきた。

「ら、ラファエル様が…いま…せん。」

この不測事態へ瞬時に二の句を継げる者は居なかった。

 

To be continued..

デュエルエクスマキナ 今環境を振り返る

来たる2017/7/6(木)デュエルエクスマキナ(以下DXM)に新旋風、初の大型拡張パック【メシーカ】が参入する。

2017/3/30にサービスインしたDXMは現在までに小型拡張【烈火の群狼】を経て、総カード数324枚。(らしい。)

今ある環境は今だけのもので一度新しい環境を迎えればこれまで露出の多かったカードも全く見なくなるかも知れないし、これまで埋もれていた意外なカードの活躍が見られるようになるかも知れない。

 

新環境の到来を目前に控えたいま、今回は現在の環境における各勢力の特徴や代表的なカードを振り返り、整理したいと思う。

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メニュー

 

ニュートラ

今環境におけるニュートラルカードは初期プールということがあってか、汎用性が高くて強力な(鉄板と言い切れる)カードが多く、ネガティヴに捉えるならば、それがデッキ個性を失くす最大要因だったと考える。個人的にカードゲームにおいて鉄板カードというのは無い方が良いし、思考を挟む余地すらない程のパワーカードが何枚もある今環境は好ましく思っていない。
ただしニュートラル・三種の神器(デーモンスネイル、ゴーレム、サナム)はどれもこのゲーム特有の概念であるマスやレーン配置を強く意識させるカードであったため、これは敢えて派手で分かりやすい能力を彼らに持たせたことで提供元DeNAがユーザーへ仕様の普及と学習を意図して促したように考えられる。

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説明不要なおなじみのパワーカード3種

 

その後に登場した【烈火の群狼】の「召喚時ダメージを与え合う」はそこから半歩先、相手のリターン行動の予測を促しているし、これまでの3ヶ月はDXMの独特なルールや概念を学ぶ一種の裏チュートリアルだったと解釈できなくもない。収益が実を結んでいるかは知らないが、実際に身を削ってユーザーへ段階的な学習を促しているならば、それは好意的に捉えていいと思う。

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初期配布のレジェンダリー《水晶術師 ジアー》。ウルモルの集落やターニア、アテナのガーディアンパワーなど相性の良いカードは多く、前後列を学ぶ良い教材だった。

 

今環境は厳密に言うと最初期と小型拡張【烈火の群狼】追加後の2つに分けられる。

最初期に環境を席巻したのがオリンポスーミッドレンジとルクソールーコントロールだ。(烈火の群狼追加後はルクソールの席へアスガルドが座る)

オリンポスにとって《エルフの地術師》は作成した海洋地形が一部速攻持ちのトリガーとして機能し、最初期から烈火〜追加後まで大いに活躍した。《ソベクの怒り》を搭載したルクソールアスガルド然り、今環境におけるひとつのキーは、「地形の恩恵を甘受できたか」が大きなアドエッセンスだと考えており、2/2/2の高水準な地術師を利用した上で後の地形も活かせるカードの存在した勢力が強かったように思う。

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抜群の安定感に寄与した影の功労者《エルフの地術師》

 

最初期における環境のもう一翼ルクソールにとって《ウルモルの棟梁》はピックしておきたい。棟梁の生成した「ウルモルの集落」から繰り出される無限に蘇るゾンビウルモルは、豊富な各種AoEの盤面リセットと相性良く、高コスト帯に優秀なカードの多いルクソールの、〝ユニット数をあまり展開できない弱点〟をケアし、総じて親和性が高い。攻守両用継続的に盤面へ影響を及ぼすその効果は見て取る地味さより遥かに大きかった。

同じく攻守両用、《人造獣 カオスキメラ》も好まれた。烈火の群狼追加後はアスガルドの台頭があり、全体的にスピード感が緩和されドッシリ腰を据えたバトルが増えたために、現在では多くの勢力で使用される。

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使われて判るウザさ《ウルモルの棟梁》

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ハンドの枯れた終盤に叩きつける脅威《人造獣 カオスキメラ》

 

最後にメタカードをおさらいしてニュートラルを締めたい。環境に対するメタとしてニュートラルから多くのカードが採用された。

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《彷徨えるゴーレム》との数少ない等価交換を目的に採用され、腐る場面の少ない除去カード。《森獣の要撃》

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特定の危険カードを意識し採用される確定除去。烈火の群狼後採用率が増えた。《焔蛇の激昂》

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特に対ルクソール戦において、弱体化されたユニットをそのままフィニッシャーへ転化させる正に切り札的存在となった。《外科医 ベリザリオ》

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刺されば5/5展開+除去で盤面をひっくり返すパワーを持つ。スキルが使用できずとも5/5のため腐らない点が非常に有用。能力的に今後も価値を高め続けるであろう《ホムンクルスのサルファー》

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烈火の群狼追加後に台頭したアスガルドを意識して採用されることが多い。AoEが優秀なアスガルドにとって確定除去に割けるデッキ枠はあまり無く、なかなかに刺さるのだ。《死王 リッチロード》

 

◆オリンポス

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勢力に入っていく。今環境におけるオリンポスの人気と実力は初めからで、DXM最初期において環境の一翼ルクソールへ一方的にアドが取れたことから当時最大勢力となった。また、デッキ作成コストが比較的安価であったことや、MTGプロプレイヤー滝村和幸氏が開発したミッドレンジオリンポスがランクマッチ1位を取り周知したことも大きい。

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個人の使用デッキ。滝村氏のデッキがベースになっている。

 

今環境のオリンポス勢力、最大の特徴に豊富な速攻持ちが上げられる。オリンポスの速攻持ちはそのほとんどが大変有用で甲乙つけ難く、複数枚採用し多重起動することでオリンポスのひとつアイデンティティを確立し、その存在を誇示したように思う。速攻はスキル自体が召喚酔いの概念を無視する大変強いもので、レーン概念と相まって先へ、先へと相手をリードした状態でゲームメイクできる。 

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よく働きました。《オリンポス 各種速攻持ち》

 

相手プレイヤーへ直接ダメージを与える点も優れていた。その中でも特筆したいカードは《ケラウノスの制裁》。オリンポスは小・中型ユニットによる高速展開が得意な反面、対向に護衛持ちや大型ユニットを展開されるとそこに多くのリソースを割くことになり、一度防戦に回ると滅法弱い。このカードは届かない一打、本来止まる流れをこじ開けて相手のフェイスへ継続アプローチを可能とさせたことで、大変価値ある一枚となった。

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この一枚に救われたシーンは多い。《ケラウノスの制裁》

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ユニット展開+フェイス2点という離れ業で無類の存在価値があったと言える。《テーバイの重装投槍兵》

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フェイスへ打てて本当に良かった。《ハルパーの追撃》

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ハマった時の異常なDPS《サテュロスの短弓兵》

 

その他、脇を固めた優秀なカードたちは以下。

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立ち上がり局面で盤面に与えるプレッシャーは非常に大きい。《テーバイの重装歩兵》

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本人が持つポテンシャルの高さから相手のヘイトが集中する《海侵神 アンピトリテ》

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ハデスのガーディアンパワーでパンプしたり、2/2の対向に展開すれば相手の動きを止めることができる。正に変幻自在。《多頭竜 ヒュドラ

 

今環境において個人がこの勢力に持つイメージは良い。レーンや前後マスの独特な概念を理解した上で、オリンポスの戦略は多くの場合でシーソーゲームよろしく、点の取り合い。時間軸を見ながらフェイスに加点することを念頭に置き、互いのDPSを把握、相手の脇の甘い場所を叩いて点を積み上げることを行うので、DXMの仕様をよく体感できた。

今後も良い意味で各勢力パワー調整のベースになるといいと思う。

 

 

ルクソール

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今環境、特にDXM最初期におけるルクソールのスター軍団感は相当なもので、開幕当時オリンポスと二大巨塔を築いた。全体的に高コスト帯にテキストを三度読みしてしまうくらい破格で飛び抜けた性能のカードを多数有している。

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今環境へチューニングした個人の使用デッキ。

 

今環境ルクソールの特徴はAoEの数と高性能カードが豊富であるという2点と考える。

AoEは《大気神 アメン》を筆頭に4/6/8/9コストと中盤以降ひしめいていて、盤面コントロールは非常に手堅い。盤面リセットを利用して自身のユニットの展開操作をし、ハンドアドを作り出したりできる。

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非常に強力なリセットカード《ルクソール AoE各種》

 

高性能カードについては多数あるが、中でも特筆するなら《冥獣 アメミット》になる。このカードは後列展開すると放っておくだけで毎ターン2点ダメージフェイスへ行くというブッとんだ性能で、前列に壁を置いて存命した分モリモリ相手のライフを削ってくれる。盤面の分が悪ければ《セクメトの殺戮》に逃げても高耐久で生き残り、タイプも持っていないため《ホムンクルスのサルファー》でも潰せず、確定除去スペル以外の対抗策が極めて難しい。

ルクソールの高性能カードの多くはカード能力と引き換えに、コストが重く同ターンに多重展開できないことでバランスを取っている。

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最重要ユニット《冥獣 アメミット》

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一枚でライフ差10。《ファラオマスクの呪い》

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ベリザリオなどの対抗策が取れない場合、そのユニットは実質退場同然なので、非常にコスパのよいスペルと言える。《セルケトの息》

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放置した分2/1ミイラ《葬送神 アヌビス》

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マンティコアのほぼ上位版《神獣 スフィンクス》 

 

その他、脇を固めた優秀なカードたちは以下。

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立ち上がり局面の壁+スペルサーチ《メンネフェルの踊り子》

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前列に置けば餌食《蠍人 ギルタブリル》

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変質・除去はお家芸ルクソール スペル》

 

 

ルクソールは【烈火の群狼】登場後、同勢力の追加カードが個性の強いものであったことと、相対的に他勢力が強化、また「召喚時ダメージを与え合う」などのスキルによって時間軸の回転が早まったことによりスロースタートである同勢力にとって向かい風となっていて、最初期と比較して現在の露出は1/5くらいにショボくれている。

ユニットの能力をいじったり、変則的な飛び技が散りばめられてるので中・長期視野でも比較的腐りにくいカードが多い勢力だと見ている。

 

 

アスガルド

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今環境におけるアスガルドは最初期からオリンポス・ルクソールの二大巨塔に差し迫るポテンシャルを感じさせる力があったところ、【烈火の群狼】の追加で爆発。他勢力との力の差を決定付けた。今環境の終わる現在、オリンポスと並び最多勢力となっている。

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個人の使用デッキ。「THE FAT」

 

今環境アスガルドの特徴はオールレンジであったことと、高性能な中・大型ユニットが豊富である、ということの2点。

オールレンジであるということの要因として、回復力と除去力がある。アグロ寄りな相手には主に《療法手 シギュン》や《ドワーフの炊事番》らによって延命し、盤面の分が悪ければ《バルドルの閃光》や《グングニルの穿通》によってクリア。自身が得意とする中・終盤へ安定感を持って進行できた。またスロースタート寄りな相手にも後述する優秀な大型ユニットの存在によって力負けせず、全ての型の相手に同等かそれ以上のパフォーマンスで試合展開ができた。

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元来不利マッチであった対アグロとの戦いにおいて生存率を大幅に上げることに貢献した。《療法手 シギュン》

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最初期からマストセレクト《ドワーフの炊事番》

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小型除去はもちろん、終盤戦ジアーの水晶割りや自軍大型の前へ捨て壁として雑に置かれた小型除去、トールへのムチ打ち等々、終始使える《バルドルの閃光》

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氷ディレイが体制立て直しの起点となるケースもある《グングニルの穿通》

 

高性能な中・大型ユニットについてピックしたい。特筆すると中型からは《百戦神 テュール》、大型からは《雷電トール》をピックしたい。

テュールアスガルドにとって烈火の群狼によりもたらされた最大の恩恵だ。中型展開、除去、バフ、それらをたった一枚、5マナの投資でやってのけてしまう、環境破壊カード。テュールの登場によって様々なカードが生き返り、活躍の機会を得たが既に本人の弱体化が決まっている。

トールについては、スタッツ・スキル共に申し分なく同マナ帯の5/5と有利交換する点、耐えた分だけフェイス2点を積み上げ、入れない理由を見つける方が難しいくらいの最初期から一線で活躍し続ける頼れる兄貴的存在だ。

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マナ、攻撃、耐久、能力、どれをとっても超一級のカード。ゲームに勝ち、多くの引退者を作ったであろう《百戦神 テュール

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展開すれば必ず仕事をするアスガルドの戦友《雷電トール》

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素出しで強いのにサイズアップする!中〜終盤のリソース消費合戦を制する投石《アスガルド 氷河乗り各種》

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盤面コントロールに長けた安定性のある《魔狼 フェンリル

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相手にAoEが無ければそのままゲームを決めるパワーカード《戦略神 オーディン

 

その他、脇を固めた優秀なカードたちは以下。

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スタッツ・スキル両面に優れたユニット。《大地蛇 ヨルムンガンド

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高品質のバッファーが優位な盤面を作る《霊鹿エイクスュルニル》

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使いやすい軽量除去。《スカジの氷矢》

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最初期における対アグロの功労者《傭兵 ハスカール》

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全カード通して最軽量の確定除去《ヘルの招来》

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奇襲性に富んだバフ。ジアー同士など膠着した盤面に打つと抜群に強くそれだけでゲームを決める破壊力を持つ《ミョルニルの掲揚》

 

烈火の群狼によってテュールシギュンを迎えたアスガルドは、今環境において確実に最強勢力であったと考える。デヴェロッパーはテュールに対してどのような試行を施し世に出したのか分からないが、これぞ正に田中Pの公言する「これって無理ゲーだよね」という状況が作り出されていた様に思う。100戦100勝とならないのはそのプレイヤーの構築/プレイング/ドロー運が作用するからであって、単純なカードパワー比較で他勢力にとってテュールは間違いなく無理ゲーであったと個人では考えていて、運営の仕方にものすごく疑念を持った一件だった。

幸いにもテュールは弱体化が本日実施され、新弾をクリーンな状態で迎えることができる。予てからデッキへ同じレジェンドを複数枚投入できることに個人は批判的なため、このままレジェンドゲーに突き進まないことを願うのみ。

ちなみに、個人は最初期からアスガルドが一番好きな勢力であり、それは今も変わっていない。

 

 

◆イズモ

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今環境のイズモは相対的な印象として存在感が薄かったとどうしても言わざるを得ない。ゲームの回転数はオリンポスを上回る超アグレッシヴな高速展開が可能でハマった時の爽快感は光るものがあるものの、盤面コントロールの面においてその弱さを最後まで払拭できなかったように思う。

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個人の使用デッキ。守りを捨てた片道切符の捨て身型

 

 

イズモの振り返りについては特徴(強み)に加えて、少し趣向を変え残した課題についても掘り下げたい。

今環境イズモの特徴に、優秀な軽量スペルの存在がある。特に1/2コストのバウンススペルは全カードを通して見ても屈指の性能を持っており、相手の大型をバウンスして数で圧倒するムーブが強かった。

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乱波や他の小型と交換。優秀なバウンス《天狗隠し》

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超高性能と言い切れる指定バウンス《鬼切の誘引》

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使い勝手のいい《風魔手裏剣の投擲》

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優秀《イズモ 軽コストスペル》

 

では、残した課題についてはどうだろう。イズモがゲームを決めきれない、露出の少なさにもそれが現れていた最大の要因は、詰まるところ中・大型ユニットの不在と考えている。各勢力がそれぞれに個性を持ち、イズモの設計は小型ユニットもスペル同様に優秀なものが数多く存在する。

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精鋭揃い《イズモ 小型ユニット》

 

それらを同ターンに序盤から多重・高速展開できている時はいいが、小型なため当然耐久性はなく、ひとたびオリンポスの速攻やハデスのガーディアンパワー、ルクソールアスガルドが所有するAoE、トリニティの鉄壁、護衛らで倒されるとハンド枯渇、ジリ貧を起こす。《怪異 コダマ》を使ったスペルイズモが一定の人権を得たのはハンド枯渇を解消したからだろう。中・大型ユニットの不在がハンド枯渇を引き起こして負けると個人は考えている。

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イズモの到達した1つの回答、スペルイズモのキーカード《怪異 コダマ》

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どれも強いが、盤面維持は難しい《イズモ 中・大型ユニット》

 

個人的に今回のテュールに近いような勢力の顔となるスターが中・大型に一枚出るとかなり違う気がしている。他勢力と個性の差別化を明確にするのであれば、ハンド枯渇の解消や更なる高速回転を拡充してあげなければ厳しいと感じる。

今環境はイズモにとって決して良い戦場だったと思っていないが、ツクヨミのガーディアンパワーの独特さなど良いものをたくさん持っている勢力なので新環境に期待したい。

 

 

◆トリニティ

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今環境におけるトリニティは苦手な相手も得意な相手も無く、虎視眈々と王座を狙い続けたダークホース的存在だったように思う。結局最後までその地位に座すことは無かったものの、一貫して高いポテンシャルと一定数の人気を獲得し続けた勢力である。

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個人の使用デッキ。

 

今環境トリニティの特徴はランプと全マナ帯通して平均点以上のユニットが揃っていたことが上げられる。

ランプの象徴となったのが《聖堂領の修道女》と《聖樹の杯》だ。修道女は終盤完全に腐る弱さを持つものの、立ち上がり局面に展開すると常に相手より優位で堅牢な盤面を作り続け、全ゲームを通して相対的に大きく貢献した。杯は奇襲性に富み、前倒しで駆り出される《彷徨えるゴーレム》や《ロードスの聖騎士》など、立ち上がり局面の中型光速展開や、中盤の圧されているどうしようもないような場面を救った。

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ハデスのガーディアンパワーに倒されることも多かったが総じて使用して損が絶対に無かった《聖堂領の修道女》

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あらゆる場面で使い所の多かった《聖樹の杯》

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相手も恩恵がある点で一見嫌厭しがちだが構築を重めにすれば相対的アドに繋がった《聖鳥カラドリウス

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《トリニティ その他ランプ》

 

ランプしたそのアドバンテージの受け皿がトリニティには揃っており、片手落ちとならず甘受できた点も欠かせない。トリニティには全マナ帯通して平均点以上のユニットが揃っている。《ロードスの聖騎士》は決して得意な相手とはいえない展開の早いオリンポスに対し、その流れを断ち切るのに貢献したし、《人面獅子 マンティコア》はランダム性があるものの大型ユニット展開+除去としてシーンを選ばずに使用できる汎用性の高さを持っている。

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スタッツはやや物足りなさがあるものの護衛が光りオリンポスには一定以上の仕事をした《ロードスの聖騎士》

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高い採用率を誇る汎用性の高い大型《人面獅子 マンティコア

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1マナ重いゴーレム。少し語弊もあるかも知れないがゴーレムを4回使えると思ったら優秀だろう。《聖堂領の重騎兵》

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サナムはほぼ全デッキに入っているような状態の中、使い所は無くならなかった《火竜 ウェルシュドラゴン》

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トリニティの顔でありリーサルウェポン。《堕天使 ルシファー》

 

その他、脇を固めた優秀なカードたちは以下。

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立ち上がり局面の頼れる存在《聖堂領の格闘教官》

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派手さはないが確実性のある《マスティマの誘引》

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ATKが高めのトリニティにハマるコスパの良い除去《ベリアルの炎》

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ルシファーサーチ《聖告の大天使 ガブリエル》

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サナムへの回答《ヴェネツィアの戦車》

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分かり易い良性能《聖護の大天使 ミカエル》

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リーサルや緊急脱出に《メタトロンの決闘場》

 

トリニティは小粒揃いで天下を取るポテンシャルは十分に満たしていたような印象を持っていて、実際最強アスガルドを使用の際に一番負けが多く苦手意識を持っていたのがトリニティだった。

《火竜 ウェルシュドラゴン》を筆頭とする「前列を咎めるカード」が折角あるのに自身もサナムを使用することで《ヴェネツィアの戦車》が使いこなし切れなかったり、それらの露出があまり無かったことは勿体無かったように感じている。

まだまだ伸び代を残している可能性のある勢力だと感じているため、新環境ではどのような力を発揮するのか期待したい。

 

 

◆最後に

デュエルエクスマキナが世に出てから3ヶ月。テュール登場から個人の稼働は減ったものの、個人としては前段で述べたようにこれまでがチュートリアルでこれからが本番、と期待を寄せている。

新環境に寄せる期待はいろいろあるが、今回は一切事前情報に目を通さないでいる。

個人的には現在完全に産廃化してる地形生成ガーディアンは上方修正を受けないまま、カード追加だけで使用されるようになるのかが大きな関心事。少なくとも今環境に出番はまるで無かった。

遠くない未来、昔のテュールは悪さしてのぉ〜ふぉふぉ、とか新規に古参ぶりたいので、新環境、成功しますように!←

 

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長くなってしまったが、最後にデュエルエクスマキナ黎明期を戦い抜いた全ての勢力・カード達へ親愛を込めてこの場を締めたい。Thank You!!